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zoom RSS 「カエル少年」失踪事件をモデルにした韓国映画『子供たち』

<<   作成日時 : 2011/07/15 07:04   >>

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画像 韓国には1980年代末〜90年代の初めに起こった三大迷宮入り事件というのがあり、その一番目が映画『殺人の追憶』のモデルになった「華城連続殺人事件」、二番目が『あいつの声』で映画化された「イ・ヨンホ君誘拐殺人事件」、そして映画化されずに残っていたのが、大邱で1991年に発生した「カエル少年失踪事件」。本作は待望の(?)未映画化だった三番目の事件を映画化したものである。監督は『リターン』を撮ったイ・ギュマン。

 1991年3月26日、30年ぶりに復活した全国基礎自治体議会議員統一地方選挙の日、大邱近郊、トアプ山のある麓の村でサンショウウオを捕まえに遊びに出かけた5人の小学生の少年が行方不明になった。父兄からの通報があったものの当日は選挙のため捜索に十分な人員が割けず、翌日大規模なトアプ山周辺の捜索が行われ、父兄たちも探し回ったが杳として彼らの行方は分らなかった。
 それから3年後、今まで何度も放送賞を受賞してきたものの、ドキュメンタリー番組のやらせが発覚して、MBS放送、カン・ジスンプロデューサー(PD)(パク・ヨンウ)が大邱に左遷されてきた。カンPDはアン局長ら地元のスタッフが、世間から半分忘れかけていた「カエル少年失踪事件(実際には少年たちはサンショウウオを追ったのに、蛙を追ったと誤って伝えられたため)」を未だ追っているのを見て、ドラマにならないとバカにしていたが、この事件の資料を探している内に、国立科学大学心理学教授、ファン・ウヒョク(リュ・スンリョン)が犯人は意外に身近なところにいるはずと主張しているビデオを資料室で発見し、自分のカムバックの契機になるようなドキュメンタリーが出来るのではないかと自発的に取材を始めた。
 ファン教授によると、事件発生後2週間後に被害者の一人であるジョンホから、ジョンホの自宅に電話を掛けた記録テープが怪しいとし、犯人はジョンホの父母である可能性があるとの指摘。その話を聞き、さらにジョンホ宅に取材に行った感触から、カンPDは反対するアン局長ら大邱局の幹部を説得して、ジョンホの父母(ソン・ジル&キム・ヨジン)が犯人である可能性があるとの方向性の番組作りを強行することに。そして担当のパク・キョンシク刑事(ソン・ドンイル)を説得してジョンホ宅の一斉捜索を実現するが、捜索は空振りに終った。
 その後なんとかカンPDはソウルの本局に戻ることが出来た一方、一時濡れ衣を着せられたジョンホの父は癌で死亡。世間がすっかり事件を忘れ去った2002年、被害者宅のすぐ近くの山中で少年の白骨が発見され、11年ぶりに被害者の遺体が確認された。警察の科学捜査研の検死結果によれば何らかの特殊な鈍器で殴られた他殺の可能性が高いとのこと。
 既にソウルに戻ったカンPDは以前の事件取材への贖罪感から何とか真相を割り出そうと独自取材を始め、当時担当だったパク刑事から、有力な容疑者だったもののアリバイから断念した容疑者の存在を聞き出す。パク刑事は、なんだか再び犯人が再び殺人の味を思い出すような予感がするのだという。
 カンPDは現在容疑者がソウルにいることを知るのだが、そこで重大なミスを犯してしまい、それがとんでもない結果を招く...

 やはり迷宮入り事件を描いた映画と言えば、先も触れたがポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』のできとオリジナリティが破格であり、それを追って迷宮入り事件を描こうとすると(特に韓国では)やはり『殺人の追憶』が良くも悪くもハードルとして立ちはだかってしまう。本作も『殺人の追憶』のエピゴーネンに墜ちないよう方向性を模索し、途中まではかなり良い線まで行ったものの、やはり『殺人の追憶』を超えるのは難しかった... というのが見ての感想である。
 『殺人の追憶』は、事件が未解決に終りながらも感情的カタルシスを持ってくるという離れ業をやってのけたのだが、本作はそれとは別に(もちろん公式には犯人は発見されないのだが)、真犯人とおぼしき存在を映画の中で示唆することでカタルシスを実現しようとする。だが、その部分でやはり非常に映画的説得力が落ちてしまい、個人的にはこれは映画の方向性としては違うのではないのか、という違和感がぬぐえない。また、ファン教授の主張の中には事件と選挙との関連を示唆する話が出てくるが、その後その話がつながってこない。
 これは全くの推測だが、当初のシナリオはかなり『殺人の追憶』の影響を受けたものであり、できあがったところで、やっぱり『殺人の追憶』の影響がバレバレという部分は何とかしようと、無理矢理直した結果、伏線が断ち切られたり、とってつけたようなエピソードが付け加えられたのではないだろうか?また、文化資本を持っている側(PDや教授)の文化資本を持っていない側(ジョンホ父母)への無意識的な横暴に対する問題提起もあるようなのだが(これは評価できるポイント)、ただとってつけたような「真犯人」の挿入や、伏線の断ち切り、脱政治色化により、これも今ひとつクリアでなくなってしまっている。ただ、映画の最後で明かされるジョンホ父母が疑われるに至った事情が明かされる部分はちょっと感動的。
 前半まではかなり盛り上がるし、パク・ヨンウ、リュ・スンリョン、ソン・ドンイルらも頑張っているのでちょっと残念。やはりシナリオをもうちょっと練って欲しい(あるいは逆に『殺人の追憶』を変に意識して練りすぎたか)という気もする。とはいえ、韓国社会を揺るがした事件入門としては好適だろう。なお、カンPD、ファン教授は映画で付け加えられた全くフィクションの登場人物(付加映像インタビューによる)。
 なお、本作品の日本公開は難しいと思う。少なくとも日本資本の配給会社は手を出さないだろう(その理由を書くとネタバレになるので書かない)。ひょっとして日本の事情に暗い韓国系の配給会社やDVD制作会社が配給やDVD化に乗り出す可能性もあるが...

 本作の韓国公開は本(2011)年2月17日。韓国での全国観客動員数は1,842,432人(2011年3月13日現在, Cine21データベースより)。国内未公開。

 監督のイ・ギュマンは釜山キョンソン大学映画演劇科卒。1999年短編『絶望』で第1回韓国映像対戦で最優秀賞。2007年、手術中の覚醒というテーマで作ったホラー『リターン』で長編デビュー。本作が長編第2作。以上DVD付属パンフレットより。

 なお、韓国盤DVDだが、Mpegの圧縮がいまいちなのか、全般的に映像の解像度が甘め。カラーの彩度も筆者環境ではやや薄めの大味な印象。初回盤には付加映像盤およびパンフレットが付属。

 なお、実際に事件があった大邱広域市達西区ソンソ国民学校(現在大邱ソンソ初等学校)周辺を地図で見ると、一帯の山は大きく切り開かれ工業団地と高層アパート群になっておりサンショウウオがいたという山や貯水池の面影を探すことは難しい。わずかに近くにあるチャンギ公園がその面影の幾ばくかをとどめているに過ぎないようだ。

▼現在の大邱ソンソ初等学校付近地図
http://local.daum.net/map/index.jsp?map_type=TYPE_MAP&map_hybrid=false&q=%EB%8C%80%EA%B5%AC%EC%84%B1%EC%84%9C%20%EC%B4%88%EB%93%B1%ED%95%99%EA%B5%90&urlX=842036&urlY=656697&urlLevel=5

原題『아이들...』英題『The Children』監督:이규만
2011年 韓国映画 カラー

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: Candle Media 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:132分 
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(付加映像付き2枚組) 2011年 7月発行 希望価格W27500

ソンソ小学生失踪事件(Wikipedia韓国語版)
http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%84%B1%EC%84%9C_%EC%B4%88%EB%93%B1%ED%95%99%EC%83%9D_%EC%8B%A4%EC%A2%85_%EC%82%AC%EA%B1%B4

付記 2011.9
「カエル少年失踪事件」は未映画化と書いたが、実はかなり早いうちに映画化されていたので訂正しておきたい。映画題名は『帰ってこいカエル少年』で製作年度は1992年、監督はチョ・グムァン、ソウルでの観客動員数は227人である。しかも2009年にはDVDも出ていた。

KMDB「帰ってこい カエル少年」(韓国語)
http://www.kmdb.or.kr/movie/md_basic.asp?nation=K&p_dataid=04605&keyword=%B5%B9%BE%C6%BF%C0%B6%F3%20%B0%B3%B1%B8%B8%AE%BC%D2%B3%E2

『帰ってこい カエル少年』DVD (教保文庫 - 韓国語)
http://www.kyobobook.co.kr/product/detailViewDvd.laf?ejkGb=DVD&mallGb=DVD&barcode=8809177012227&orderClick=LAG

2012.1付記
最近、「カエル少年失踪事件」のキーワードで検索する人が増えていると思ったら... SPOが本作を『カエル少年失踪殺人事件』との邦題で今春国内公開するようだ。
http://www.cinemart.co.jp/theater/special/kaerusyounen/


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韓国三大迷宮入り事件の一つを描いた映画『あいつの声』
 韓国1990年前後の三大迷宮入り事件の一つ、1991年ソウル江南で起こったイ・ヒョンホ君誘拐殺害事件をモデルに製作された作品。監督は『ユー・アー・マイサンシャイン』のパク・ジンビョ。韓流スターのカン・ドンウォンが出てはいるのだが、まったく顔が見えないという出演の仕方をしているのが災いしてか(かえってファンの欲求不満を募らせそうだ)、今までのところ国内未公開。 ...続きを見る
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2011/08/22 09:46

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも拝見させていただいています。当方のブログに本作の感想を書くに当たり、貴ブログを参考にさせて頂きました。事後ですが、ご報告いたします。
ところで、「日本資本の配給会社は手を出さないだろう(その理由)…」という一節がありますが、浅薄なため理解できません。出来はともかく、このままでの、配給なりDVDスルーなりはあり得ると思っているのですが、不可だとする「理由」を、可能な範囲でご教授いただけると幸いです。
中年ファン2
URL
2011/07/23 04:11
お読み頂き有難うございます。

要は本作品で真犯人とおぼしき人物として描かれる男の職業が、日本における、ある差別問題と深く関わりがあるからです。

私個人としてはPolitically Correctnessの視点から批判しようという気は毛頭ありませんが、しかしあの発想の安易さは、作品の結末に関してかなり興をそいでいるような気がしています。
yohnishi
2011/07/23 21:49
そうでしたか。理解できました。朝鮮半島にも同じような状況があった(ある?)とも聞きます。個人的にも、5人の少年たちの悲惨な運命と或る生き物の運命を重ね合わせるような演出には、かなりの違和感を覚えました。惜しい映画だと思います。ありがとうございます。また、ご教授お願いすると思いますが、よろしくお願いします。
中年ファン2
URL
2011/07/24 02:45
こんにちは。イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件で検索し、こちらに辿りつきました。「殺人の追憶」のレビューは無いようですが、そちらもぜひ読みたいです。

後、韓国の事情にお詳しい様なのでぜひお聞きしたいのですが、数年前に日本のテレビで見た事件なのですが。
再現Vによると、中学生の女の子が放課後一人で教室にいるのを学校の警備員が見て以来姿を消したというものです。
教室は内側から鍵はかからないものだったが、帰宅を促そうと開けようとするが開かない。鍵を取りに行き、もう一度教室に行くと次の瞬間彼女は校庭を歩いており、それを最後に忽然と姿を消してしまったそうです。
実際の彼女の写真も写っていましたが、眼鏡におさげといったごく普通の少女でした。
ただそれだけの事件といえばそれまでですが、あまりに奇妙で、調べようにも情報が少な過ぎて気になっています。
ご存知ないでしょうか?
14GF(ゴールドフィルド)
2012/07/09 17:43
すみません。その事件については分かりません。発生場所とか、被害者名等何か手がかりがあれば、韓国のサイトで検索してみますが...
yohnishi
2012/07/09 22:39

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