yohnishi's blog (韓国語 映画他)

アクセスカウンタ

zoom RSS 下人のたった一人の革命 『房子伝』 -韓国映画-

<<   作成日時 : 2011/06/24 06:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

画像 『淫乱書生(邦題: 恋の罠 −淫乱書生−)』のキム・デウ監督による「春香伝」の大胆な再解釈映画。ベッドシーンの話題が先行していたのでさほど期待していなかったが、個人的には予想外に面白かった。

 朝鮮朝後期の全羅南道南原(ナムウォン)。そこへ色眼鏡の通俗小説家(コン・ヒョンジン)が、物語を書き残して欲しいとの要請を受けて当地に住むあるやくざ(乾達[コンダル])の男のもとへ取材に来た。その男こそがかつて李夢龍の房子[パンジャ=ある個人の世話係]だった男(キム・ジュヒョク)。小説家に求められるまま元房子が話し出したのは、キーセンの娘、春香[チュニャン](チョ・ヨジョン)の物語だった...

 当時房子は30歳近く。下人としてあちこちの屋敷や店を渡り歩き、この地の両班の惣領、李夢龍[イ・モニョン](リュ・スンボム)の家に仕えることになった。やがて夢龍のキーセン屋行きにお供することに。そこで美人で有名なキーセンの娘春香にである。夢龍は春香にデートを申し込むが彼女は自分はキーセン屋主人の娘だが自分自身はキーセンではないと拒否。そこへ別の両班が来て春香に無理矢理デートを承諾させようとしたのを、房子は身を挺して阻止。却って自分が主人を差し置いて点数稼ぎすることになってしまった。
 そこで夢龍から春香とデートしたいので何とかお膳立てしろとの命令。夢龍は何度も彼女に言い寄ったのだがなかなかOKしないのだという。困った房子は同じ家で下人として働くマ老人(オ・ダルス)に相談すると、将を射んとせばまず馬を射よ、というわけで春香の傍女であるヒャンダン(リュ・ヒョンギョン)を堕して説得させデートをお膳立てせよという。そこでヒャンダンを待ち伏せしていきなり彼女の下半身をわしづかみにして、お膳立てをさせる。
 そして渓谷へ夢龍、春香、房子、ヒャンダンの4名で出かけるのだが、春香が足を滑らしてくじいた上に靴を川の中に落とす。その靴を泳いで取り戻した房子は再び図らずも夢龍を差し置いて点数稼ぎをすることに。すねたのかどうか、夢龍は足をくじいた春香を房子に負ぶって家まで連れて行くよう命ずる。
 それを契機に春香と房子の仲は、房子の主人に対する反感もあって、密かにどんどん近づいていき、ついに深い仲に。その一方で、春香は母から自分を「高く売る」よく常々いわれており、身分の高い男と出会って身分上昇することを夢見てもおり、夢龍から結婚誓約書を取ってもいた。そんな中、夢龍はソウル(漢陽)に出て勉強し科挙試験を受けるよう父から命令される。ソウルに行くことになった夢龍は房子に春香に渡した結婚誓約書を取り戻すよう命じるが、彼女が房子に渡したのは、房子が春香と情を交わす代わりに、彼が春香と夢龍の結婚できるよう力を貸すという誓約書だった。房子と春香との関係を知った夢龍は、房子を南原に残して上京する。

 数年が経った。房子は春香のキーセン屋の下人として働きながら、春香との関係を続けていた。幸せそうな二人の関係に春香の母、月梅[ウォルメ](キム・ソンニョン)は娘を「高く売る」ことを諦め、二人の関係を見守る決意を。だが傍目には幸せそうな二人だったが、春香本人は実は内心身分上昇の夢を諦めていなかった。それが、幸せながらも房子の心を落ち着かせなかった。
 一方、何とか無事に科挙に合格した夢龍は宮殿に上がるが、宮殿では吏員に「美談」が求められていた。そこで、夢龍は友人のピョン・ハクド(ソン・セビョク)を使った故郷での「美談」作りを思いつく...

 既成の「美談」は作り話だった... という発想、そして主人を差し置いて下人が自分の力で女性を勝ち取っていくという物語は、まさに、被抑圧階級に属する房子によるたった一人の既成体制・身分社会に対する革命を描いたものだと言える。だがその夢は彼がパートナーと思い描いた春香と共有されるものではなく、二人の関係は同床異夢である。春香にとって房子との関係は所詮当座の一時的享楽以上でも以下でもなく、彼女の究極の目標は男を利用した身分上昇であり、決して革命を求めていたのではなかった。従って彼女が主体的に動けば動く程、それは房子の思いとかけ離れてしまう。それを男の独りよがりと断じてしまえばそれまでであるが...
 男と女の間には暗くて深い溝が、存在する。そのすれ違いは、ピエール・ブルデューの社会学用語を援用して言えば、男と女のハビトゥスの違いに基因する。その切なさを巧みに描写した作品に仕上がっている。

 本作品は韓国では2010年6月20日封切り。韓国全国観客動員数は3,014,523人(KOBISデータ)で、韓国の2010年上映作(含外国映画)中10位。日本では2011年7月に竹書房よりDVDリリース予定。DVDタイトルは『春香秘伝 The Servant 房子伝』という長ったらしいもの。

 監督のキム・デウは1962年生まれ。1991年韓国映画振興委員会(KOFIC)のシナリオ公募に入賞したのをきっかけに、映画シナリオ作家としてデビュー。『愛したい女、結婚したい女』(1993)『情事』(1998)『鱒』(1999)『反則王』(2000)『ロードムービー』(2002)『スキャンダル』(2003)などのシナリオを手がけ、シナリオの第一人者として認められていた彼は2006年、4年掛けて準備した自作シナリオの『淫乱書生』で監督デビュー。本作が監督2作目。

 本作の韓国盤DVDの画質だが、おおむね優秀で往事の韓国盤を彷彿とさせる。但し部分的にビットレートが落ちるところで樹木などのテクスチャが荒れるところがある。おそらくテレシネしたソース自体はかなり優秀であるものと推定される。平均ビットレートは7.34Mbit/secで、真面目に可変でエンコードされている。監督&俳優インタビューを含んだメーキング等が付く付加映像盤との2枚組。なお韓国ではBlu-rayもリリースされたようだが本記事執筆時点ではほぼ売り切れ状態の模様。
 国内盤DVDに関しては、Mpegエンコーディングの方法によって画質が変わってくる可能性がある。

原題『방자전』英題『The Servant』監督:김대우
2010年 韓国映画 カラー

DVD(韓国盤)情報
発行: CJ Entertainment販売: ART Service 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:124分 
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(2枚組) 2011年 1月発行 希望価格W25300


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
下人のたった一人の革命 『房子伝』 -韓国映画- yohnishi's blog (韓国語 映画他)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる