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zoom RSS 韓国映画史上初めて済州4.3事件を扱った『花雨』

<<   作成日時 : 2011/02/04 17:14   >>

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画像 韓国でも長らく闇の中に葬られてきた済州4.3事件。本事件に関しては在日朝鮮人作家、金石範の小説『火山島』が詳しいが、金大中政権以降ようやく本国でもこの事件に関して大っぴらに言及できるようになった。この事件をモチーフにした韓国映画史上初めての作品が本作品。

 舞台は1960年前後の済州島のとある高校。この高校の校庭には4.3事件の時、たくさんの犠牲者の遺体が埋められており、夜中になると夜な夜な、犠牲者たちの幽霊が出没すると噂されている。
 その高校で級長として権力をふるってきたヒョンソク。だがある日、彼は本土(韓国では「陸地」)に去ることになる。空白となる級長の座を伺うのは、ドジン(ユク・ドンイル)とミンソク(イ・スンミン)。ドジンは、取り巻きから、次の級長だね、と言われて、級長は先生が決めるものだから分からないし、そもそも、そんなものに関心はないよと返すもののまんざらでもない。実はその裏にはクラスのアイドル、ソヨン(ハン・イビン)を巡る競争があった。
 そんな中「陸地」から転校生がやってくる。その名はドンイル(キム・ドゥジン)。ドンイルは頭は切れるものの、「陸地」者として、クラスの中から受け入れてもらえない。そんなある日、ドンイルがドジンに近づいてくる。そしてドジンに級長になりたくはないか、と単刀直入に聞いてくる。ソヨンの心をつかむには級長になる必要があるだろうというのだ。ドジンは、以前取り巻きに話したように、級長は先生が決めるものだから... と答えると、ドンイルはいい考えがあるという。それは先生に、級長は民主的に選挙及び投票で決めようと提案したらいいというのだ。
 さっそくドジンはホームルームの時間に、先生に級長は民主的に選挙で決めてはどうかと提案する。先生は一瞬その提案に戸惑うものの、お前たちは民主的に決めるとはどういうことなのか分かっているのか、と問い直したうえで、それがお前たちの総意ならそうしようと、提案を認める。
 そして、ドジンとミンソクによる、級長を巡る選挙活動が始まるのだが...

 韓国、および済州を巡る1950年前後の政治情勢をシンボリックに描いたドラマで、多少パク・ジョンウォンの『われらの歪んだ英雄』を思わせるような部分もある。「陸地」に去っていた最初の級長Aが植民地を支配した日本のシンボルであるならば、ドジンは民族系右派、ミンソクは朝鮮労働党系左派をシンボライズするのは明らかであり、ドジンに入れ知恵をするドンイルはアメリカを指すのは明白だろう。そして、彼ら相互の政争の中で汚され傷つけられてしまう済州の民衆の民族性を象徴する存在が、クラスのアイドルソヨンの存在である。
 済州4.3事件そのものを直接描写した作品ではないが、4.3事件の犠牲者が眠るとされる高校を舞台に、当時の政治情勢がシンボリックに描かれる。ただ、脚本はいささか図式的で、映画向けというよりは、むしろ演劇に向いているように思われる。この内容でそのまま映画化するのは、多少観念先行の気味があってちょっと辛い点があるというのが、正直な印象。どうせ映画化するなら、やはりよりリアルな描写が可能であるという映画の特性を生かして、済州4.3事件を正面から扱ったほうがよかったのではないか、と思われたが、やはりまだこの題材を正面から扱うにははばかられる雰囲気がまだ韓国に残っているのかもしれない。

 本作品は韓国で2010年4月封切り。KOFIC集計による観客動員数は全国3997人。日本未公開。

 監督のチョン・ジョンフンは1981年済州島生まれ。高校時代より自主映画制作に没頭。2000年東国大学映画映像科入学以降、各映画祭で短編映画が入賞。自分の短編映画『島の朝焼け』を長編化した本作で長編デビュー。それ以外に『犯罪の再構成』で助監督。以上はDaum映画、Cine21映画データベースを参考に作成。

 なお、BUZZ Picturesから出ている韓国版DVDは、韓国語字幕のみ。

原題『』英題『Sadness in Beauty』監督:정종훈
2010年 韓国映画

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:BUZZ Pictures 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 韓国語 本編:79分
リージョンALL 字幕: 韓(On/Off可) 片面一層 2010年 6月発行 希望価格W25000

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『ジスル』 - 済州島4.3事件を正面から扱った初の韓国映画
 韓国映画の中で済州4.3事件を扱った映画はなかなかなかったが、本ブログでも紹介した、『花雨』『グランプリ』あたりでようやく済州4.3事件に言及できるようになっていた。しかし、本作は韓国映画史上初めて済州島4.3事件(厳密に言うと1948年からの済州焦土化作戦)を正面から扱った作品。その意味では韓国映画史上言及必至の映画であることは間違いない。監督は『おもり』のオ・ミョル。なお題名の『ジスル』は済州方言でじゃがいもの意味とのこと。 ...続きを見る
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2013/11/15 22:08

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