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zoom RSS サッカー狂の北朝鮮軍人を描くヒューマン・コメディ映画『夢はかなう』

<<   作成日時 : 2011/01/22 20:13   >>

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画像 イ・ミョンバク政権下で、韓国と北朝鮮の関係は冷え込み、さらに昨秋は北朝鮮によるヨンピョン島の砲撃と、最悪の時期に公開&DVD発売(韓国)となった韓国映画『夢はかなう』。本作品は2002年ワールドカップをバックグラウンドにDMZを挟んで警備に当たる、サッカーというメディアを通した、北朝鮮軍兵士と韓国軍兵士の交流を描いた作品。

 北朝鮮、江原道のガードポストGP43。そこを守る朝鮮人民軍第1分隊長(イ・ソンジェ)は大のサッカー狂。「サッカーボールには思想はない」が口癖。毎日のように世界のサッカー事情に関して、口角泡を飛ばして論じたり、女性通信兵から、世界のサッカー事情に関する傍受したニュースを知らせてもらったり、部隊内の仲間とサッカーに興じたり。だが、部隊に一つしかないサッカーボールは、パンクしてしまった。
 そんなおり、韓国軍が北朝鮮側にお菓子や商品などを詰めた落下傘を飛ばす。それを発見してその中にサッカーボールが入っているのを見て狂喜する第1分隊。だが部隊長に、資本主義のモノは処分するよう言明され落胆。だが韓国製のボールを北朝鮮のマークと国旗の色に塗り替えるアイディアで、ボールだけは何とか確保する。
 ある日、第1分隊はDMZ境界線の夜間警備に出る。イノシシの子どもを見つけて、肉が食えると追っていくと、なんと韓国軍の警備部隊と鉢合わせに。一瞬緊張感が走る。だが韓国軍兵士と仲良くイノシシの丸焼きを分けて食べることに。そこで2002年ワールドカップのラジオ中継を韓国側でやることを知る。
 そこで韓国軍がサッカーワールドカップの国内向けラジオ放送をDMZ向けて中継放送するという情報を聞いて、自隊の無線機で韓国側のラジオ放送を傍受したり、韓国軍側と連絡できるように改造。他の部隊に知られるのではないかとひやひやしながら韓国-アメリカ戦のラジオ放送を傍受する。
 すると韓国側からさらに大胆な提案が。なんと先日であった場所で密かに一緒にサッカーの試合をやらないかというのだ。果たして第1分隊は...

 公開時期の間の悪さはともかく、娯楽作品映画としてみた時の映画のできとしては決して悪くはない。韓国のインターネットサイトのネティズンの感想に、「8年前に公開されていたら...」との書き込みがあったが、私も同感。
 前半では笑わせておいて、後半一挙に緊張感が高まる。ラストの爽やかさと併せて、うまく感情移入させて引きつけていくプロットはなかなか。メディアとしてのサッカーというスポーツが、敵対感情や宗教、文化的葛藤などを乗り越えるメディアとして扱われる映画は既に何本も作られていて(例えばエラン・リクリスの『カップ・ファイナル』、ケンツェ・ノルブの『ザ・カップ - 夢のアンテナ』 etc.)、今更新しいわけではない(しかし、それだけサッカーというスポーツが魅力的だということだろう)。また、一応南北間の政治的対立を背景としているものの、必ずしもそのようなバックグラウンドを深く掘り下げようとする姿勢が必ずしもあるわけでもない。また、映画に描かれているセッティングは、多少絵空事じみている or ご都合主義というのは確かであろう。
 とはいえ、娯楽作品としてみた時に、笑いを取りながらも、困難な状況に置かれた時の、北朝鮮兵士同士の友情のあり方やヒューマニズム、そして、イ・ソンジェ演じる主人公が人間的魅力溢れる人物として描かれていることも含めて、なかなか魅力的なヒューマン・コメディに仕上がっているといえる。
 最大の問題点はここのところ砲撃事件など、韓国と北朝鮮の現実の政治状況が緊迫の度を増して、文字通りこの映画に描かれていることが絵空事としてしか感じられないという、必ずしも作品に責任のない不幸な時代状況であろう。
 韓国でも興行的にぱっとせず、日本国内でもほとんど注目されていないようだが、イ・ソンジェの演技と併せて、このまま全く埋もれさせてしまうにはちょっと惜しい作品。

 本作品は韓国では2010年5月劇場公開。観客動員数はKOFICの統計によれば10万4千人あまり。日本国内未公開。

 監督のケ・ユンシクは1976年生まれ。韓国総合芸術大学映像院第1期卒。2002年コメディ『4本の足指』で長編デビュー。その後2004年『パゴダ・メンバー』を経て本作。また脚本家としては、自作以外では1995年『金を持って高跳びしろ』、1997年『ちゃんと暮らせ』、2001年『葉』、2006年『奥様はギャングスター3 (ソウルウェディング)』を手がけている。主にコメディ畑でキャリアを積んでいる。以上、Daum映画データベースを参考に記述。

 なお、韓国盤DVDの画像解像度は非常に高く、韓国盤のベスト水準。但し、あまりヒットしなかったせいか付加映像は一切含まれていない。おそらくヒットすれば付加映像と本編の2枚組みにするつもりだったのだろうが、ヒットしなかったので付加映像ディスクが省略されたのだろう。販売も「ビデオ旅行」になっているが、おそらくソウルの東廟前のビデオ小売店兼問屋で、小売店としては大きい規模だが、会社の規模としてはそんなに大きなところではない。韓国のDVDビジネスがかなりサブカル化しているのを感じる。ともあれハイクオリティのDVDがリリースされたことだけでも喜ぶべきであろう。

原題『』英題『On the Pitch』監督:계윤식
2010年 韓国映画 カラー

DVD(韓国盤)情報
発行: Planis Entertainment 販売:ビデオ旅行 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1/2 韓国語 本編:112分
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2010年 8月発行 希望価格W19800

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