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zoom RSS 不幸のオンパレードの果てにある逆説 韓国映画 『私は幸せです』

<<   作成日時 : 2010/10/01 12:09   >>

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画像 『青燕』『鳥肌』を撮ってきたユン・ジョンチャン監督の最新作で2009年韓国公開作品。原作は映画『西便制』『密陽』の原作小説を手がけた作家イ・チョンジュンの短編小説「チョ・マンドク氏」。

 誇大妄想で精神病院に収容された患者、チョ・マンス(ヒョン・ビン)。端から見れば彼の境遇は悲惨なようだが、実は彼にとっては精神病院で過ごす日々の方が幸せなのだ。
 というのは、彼は自動車修理工場を営みながら痴呆になった母親の世話を見ていた。彼には兄がいたがギャンブル狂い。ギャンブルのために何度も家から金を持ち出しては、挙げ句の果てに工場自体を抵当に入れて金を借りようとする。その挙げ句の果て、莫大な借金を残したまま自殺。この過酷な境遇に耐えられず、マンスはある日突然発狂し、里長(日本で言えば部落の長)に連れられて病院に収容されたのだ。
 そして病院には守護天使のように彼を横で見守ってくれる看護士スギョン(イ・ボヨン)がいる。

 だが、彼を見守る守護天使こと主任看護士スギョンの境遇も、実はマンスと大差ないのだった。彼女は元々この病棟の主治医の恋人。しかし彼が別の看護士に乗り換えたため、捨てられてしまう。その上父親は末期癌。休みは、抗癌剤の苦しい治療を受けている父親の看病で全て潰れてしまう。更に高額な治療費に伴う借金のため彼女の月給は差し押さえ。そんな辛い現実の中で彼女の唯一の慰めが、誇大妄想狂のマンスが示してくれる彼女への好意だった。マンスは誇大妄想の中で自分が紙に署名さえすれば銀行で通用する小切手になると妄想している。そのマンスがスギョンの境遇を知って1000万ウォンの「小切手」を渡してくれる。もちろん、そんな「小切手」には何の効力もないが、しかし彼の妄想の中のわずかな親切のみが、今のスギョンを支えているのだ。

 だが、スギョンの父親の容態はますます悪化。借金もますます増え彼女は更に追い詰められる。一方マンスは、より強度の強い治療のため、電気ショックを度々受けるようになる...

 『青燕』のユン・ジョンチャン監督はかなりの知性派で、『青燕』の監督インタビューの内容もなかなか面白かったので本作品にも期待感をもって見てみた。
 なるほど原作は、いかにもユン・ジョンチャン監督好みの逆説的状況を描いた作品であるようだ。周囲から見れば悲惨と見える状況(=発狂しているという状況)であっても、実は現実の方がより過酷であって、むしろ狂っていることの方が救いになっているという皮肉。ある部分日本のマンガ家業田良家の漫画作品「自虐の詩」にも通じる設定である。そんな中で悲劇的な状況をブラックユーモアを効かせながら描こうというのが、DVDのオーディオコメンタリーによれば、監督の意図であったようだ。おそらくさらには社会風刺のような効果も狙ったものであろう。
 但し、原作と異なるのは、原作では単なるナレーターであった看護士を、彼女自身もやはり不幸にさいなまれているという設定に変えた点だと言うことである。その中でマンスとスギョンの差は、一方は狂い、一方は狂っていない、ということ以外にない。そんな彼らが連帯しながら、端から見れば不幸であっても彼らなりの幸せを追求している、という図式を狙ったようだ。
 ただ、看護士も不幸だ、という設定が監督の狙いを上手く強化できたのかという点は若干疑問を感じる。むしろ原作の皮肉な設定が薄まってしまい、悲劇の状況だけがむしろ強化されてしまったのではないかという疑問は感じた。精神障害者同士が巻き起こすユーモラスな場面もかなり撮ったようなのだが、結局かなりの部分が気に入らなくて編集段階で多くをカットしてしまったということだ。
 あまりにも悲惨すぎて、逆説的に笑えてしまうというあたりを狙ったという監督の意図は非常に理解できる。ただ、スギョンも悲惨な境遇に設定したことが結果的にはブラックユーモアの部分があまり生かせず、そこからの社会批評という側面も多少弱くなってしまったのではないかという感じがぬぐえない。その点がちょっと惜しい。ただ、韓国社会はセーフティネットが親族ネットワークに寄りかかっており、その親族ネットワークが働かなくなった時に、どのようになってしまうのかという問題提起は、十分クリアになされていると思う。

 また、イ・ボヨンのけなげな演技が印象的だ。また日本でもヒットした「私の名前はキムサムスン」などにも出演したヒョンビンが主演ということも目玉のようだが、韓国での観客動員数が一万名にも満たなかったところから(約7500名程度)韓流枠で日本で公開されるかどうか微妙なところか。

 内容的に必ずしも万人に薦められる作品ではないかもしれないが、韓流枠ではない、問題提起的な韓国映画作品を探している貴兄には一見の価値はあると思う。本作品は日本未公開。また第13回釜山国際映画祭閉幕作品に選定されている。

原題『나는 행복합니다』英題『I am Happy』監督:윤종찬
2008年 韓国映画

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:ART Service 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編: 113分
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2010年 8月発行 希望価格W25300

ユン・ジョンチャン監督前作『青燕』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200909/article_3.html

2012.10 付記
何と本作、国内盤DVD発売が決定したそうだ。2012.12発売予定。ヒョンビン人気ということか。

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