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zoom RSS 松田美智子著 「越境者 松田優作」に見る在日としての松田優作の苦悩

<<   作成日時 : 2010/08/02 21:22   >>

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 松田優作の元妻、ノンフィクション・ライターの松田美智子による松田優作の評伝。松田優作が自分の朝鮮人&私生児という出自に悩み、それを何とか克服しようと苦しんでいた様を描いている。

 本書を見ると松田の母かね子および元夫は朝鮮人で、元夫松田武雄は日本人兵士として南方で戦死している。朝鮮半島に住んでいた朝鮮人は1944年後半まで徴兵の対象となっていなかったが、武雄は日本に住んでいたために徴兵の対象となり、南方に送られたのだろう。松田優作は、戦後母親が売春婦として糊口をしのいでいた時代に日本人の客との間の私生児として生まれたが、外国人登録上は、かね子の元夫、武雄の創氏改名前の姓を受け継いで金優作として生まれた。

 1952年まで在日朝鮮人は日本国籍を有していたものの、日本国憲法成立直前、政令によって「見なし外国人」とされ、日本人としての義務を課せられながら、日本人としての権利を奪われる状態であった。1952年日本が独立を回復した際、在日朝鮮人を含む旧植民地出身者は日本籍を維持する選択の機会は与えられなかった。松田武雄は日本人として戦死したが、かね子は日本国籍を選択する機会を与えられなかったため、当然戦死者に対する恩給の支給対象から外されたであろう。
 戦後多くの在日朝鮮人たち、特に後に朝鮮総連に集った朝鮮人たちは、日本人社会の中で自分たちの民族性を維持し、民族としての自尊心を取り戻そうとする運動に身を投じるが、それは日本社会から彼らが排除されたことへの反応でもあった。

 しかしかね子の家族はどうであったか?おそらく元夫が日本軍人として戦死したという事実が、彼女をして、朝鮮半島への帰郷という選択肢を取らせたり、あるいは在日朝鮮人民族運動のうねりに参加させることを留まらせたであろう。夫が日本軍人として戦死したということは言うならば民族への裏切り者として死んだ、ということであり、決して故郷からも民族運動の側からも歓迎されなかったであろうから。
 だからといって、在日朝鮮人には日本国籍を選択する機会も与えられなかったので、日本人として生きることも不可能であった。勿論、国籍選択の機会がなくても他の外国人と同じように、敢えて帰化申請という道もあったではないか、という声もあろう。しかし、日本人帰化のための条件は、当時非常に厳しく1)、社会的に望ましくない売春婦などの経験があれば到底許可されるはずもなかった。

 その結果、朝鮮人としての矜持を保つことも出来ず、朝鮮人社会の助け合いの輪に入ることも出来ず、帰国もできず、かといって日本人として生きることも出来ず、あらゆるプライドを奪われ、最底辺の底を舐めるような生活を余儀なくされたであろうことは想像に難くない。

 そんな家庭で私生児として生まれた優作に、自分の出自に対してプライドを持てというのは、到底無理な話であろう。尤もその劣等感がのちに偉大な映画俳優、松田優作を生む動因だったとしたら、この事態をどう考えるべきか...

1) なお、1991年に、在日旧植民地出身者に対する特別永住者制度ができてからは、旧植民地出身者(特別永住者)に対する帰化要件は大幅に緩和され、犯罪歴でもない限り原則として帰化可能となった。
 本書によれば、松田優作自身後年帰化申請をして日本国籍を取得している。しかしそれは特別永住制度前のことであり、望ましくない家庭環境出身の彼にとって、やはり当時は俳優として一定の実績を上げて初めてようやく帰化の条件を揃えられたということであったのだろう。


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松田 美智子

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