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zoom RSS 『パリ20区...』のローラン・カンテ監督作品『人事 (Ressources humaines)』

<<   作成日時 : 2010/07/10 00:23   >>

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画像 『パリ20区、僕たちのクラス』が結構面白かったので、ローラン・カンテ監督、これ以前にどんな作品を撮っていたのだろうと情報を漁ってみたら、フランスで、『パリ20区、僕たちのクラス』のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞を記念して、ローラン・カンテ監督作品集DVDボックスが発売されているのを知った。そこでそれを通販で取り寄せてみたのだが、本作はその中の収録作品の一作で監督の1999年の作品。単品DVDでも販売されているようだ。インターンシップで故郷の父が働く工場に来たエリート大学生が、資本のロジックの非情さに気づく過程を描く。

 フランク(Jalil Lespert)はパリにあるグランゼコール(エリート養成を目的とした大学。通常の大学、ユニヴェルジテよりもランクが高い)の一つ、商業大学校(現在のESCP Europe パリ校)の学生。彼は来年大学卒業を控えて、インターンシップとして彼の父(Jean-Claude Vallod)の働く工場にやってきた。彼の父は工場労働者で、その工場で30年間こつこつと働いてきた。また姉(Veronique de Pandelaere)も現在同じ工場で働いている。フランクも父と一緒に幼い頃工場の行事に参加した楽しい思い出のある工場だ。父も、彼の様な工場労働者の子弟がグランゼコールに進学できることは稀なので、息子がインターンシップとはいえ、エリートの一員として誇らしい姿で工場にやってくることは何よりも自慢だ。
 フランクはインターンシップ生として工場の人事部に配置される。そこで彼に与えられた課題は、現在週39時間労働制の工員たちにどうやって35時間労働制を受け入れさせるかということであった。単純に考えれば39時間の労働が35時間に短縮するのだから喜ばしいはず。だが労働組合員である労働者たちは、賃金カットや残業代削減、あるいはリストラの口実にされるのではないかと疑心暗鬼。特に激しく対抗するのは組合活動家のアルノーおばさん。経営側の言うことにはなから耳を貸そうとしない。けんもほろろの組合の態度に工場長(Lucien Longueville)も人事部長(Pascal Semard)も弱り果てていた。
 フランクは法律上は組合の同意がなくても35時間制は実施できるはずだ、と人事部長に進言するが、人事部長は例え紙の上ではそうだとしても、実際には組合の同意なしに就業規則を変えるなんて無理だ、現実を分かっていない、と取り上げてもくれない。たまたま工場長がフランクを車で家まで送ってくれた時に、工場長にその旨進言した上、組合の同意を取る代わりに、労働者に直接意向調査をしてみてはどうかとアイディアを出す。工場長はそのアイディアを大いに気にいるが、人事部長は自分の頭越しに工場長に進言しては困るとおかんむり。
 だが、フランクは工場長が彼のアイディアを高く評価し、卒業後は是非我が社に来てくれといわれたことに大いに気を良くし、一所懸命アンケート作りに取り組むとともに、父親にも会社からオファーがあったことを話す。父親は当然とても喜んでくれた。
 しかし、たまたま人事部長のコンピュータを見て、会社側が12人を解雇する計画を持っていることを知る。そして、その対象の一人が彼の父であることも...

 本作品は単純な図式に解消しようとしないローラン・カンテ監督の視線に感心させられる。やはり『パリ20区... 』に通ずる視点は既に準備されていたのだ。この話は単純に要約すればエリート学生として素朴にブルジョア的思考方式に何の疑問を抱かなかった青年が、自分の父親のリストラ計画を知ることにより、自分が元々属していた階級に関して、そして今現在自分がブルジョア階級への入口に立っているという、階級的自覚を獲得する、という話になる。
 しかし、簡単に階級意識に目覚めたから良かった... という話には終わらせていない。父は仕事に真面目で誠実で仲間から慕われる労働者であったものの、息子には労働者に留まるなと常々言っており、それが彼のグランゼコールへの進学につながったこと、そして父は息子が会社の管理職・エリートの入口に立ったことを何よりも喜んだことが描かれる。
 その息子は会社の父に対する非情な待遇に怒ることを通して、彼は新たな階級的自覚を身につけていくのだが、そのことにより、会社の幹部になる機会を失ってしまう。そして父は自分の解雇が撤回されたり、息子が階級意識を身につけることよりも、息子が自分が長年勤めた会社でエリートとして勤めることを何よりも願っている。息子のサポートで労働組合が会社のリストラ計画に対して戦闘的になっていくことも、一歩身を引いて悲しい目で眺めるばかりなのだ。そこには父親の階級意識に解消されない会社への愛着、そして父の息子への思いといった感情がバックグラウンドにある。
 事態を単純化して描かずに様々な複雑な要素を投げかけて問題提起するローラン・カンテ監督の深いまなざしが印象的。

 国内では『ヒューマン・リソース』という邦題でシネフィル・イマジカにて放映されたことがあるようだ。また2010年3月日仏学院のローラン・カンテ特集上映会で『人的資源』との邦題で上映された模様。

原題『Ressources humaines』英題『Human Resources』監督:Laurent Cantet
1999年 フランス映画

DVD(仏盤)情報(ローラン・カンテDVDボックス Coffret Prestige Laurent Cantet)
発行・発売:France Télévisions Distribution 画面: PAL/16:9(1:1.77) 音声: Dolby5.1 仏/伊語 本編: 100分
リージョン2 字幕: 仏(On/Off可) 片面二層(4枚組) 発行年2009年10月 amazon.fr価格 € 29.99
※ローラン・カンテボックスには、本作以外に、『パリ20区...』『日課(l'imploi du temps)』『南を目指して(ver le sud)』を含む。上記データは基本的には本作品に関してのみのデータ。

単品販売あり

『パリ20区 、僕たちのクラス』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201005/article_7.html

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