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zoom RSS 近日公開 アンチ金八先生映画 『パリ20区、僕たちのクラス (Entre les Murs)』

<<   作成日時 : 2010/05/14 06:21   >>

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画像  カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した作品。パリ20区の移民の子弟の多い地区の中学校における、理想主義に燃えた教師の奮闘と生徒とのやりとりをドキュメンタリーかと見まがうタッチで描いた作品。原題は『Entre les Murs』で直訳すれば「壁の間で(英訳ならbetween the walls)」となるが、なぜか日本人のブログやWeb上での紹介では「壁の中で」と訳しているケースが多い。公式な邦題は『パリ20区、僕たちのクラス (公式英題は The Class)』に決まった。原題は、教室内コミュニケーションにおける教師と生徒との間の障壁、そして生徒の中での民族間の障壁を象徴しているものだと思う。原作はフランソワ・ベゴドーの小説だが(邦訳『教室へ』早川書房刊)、原作者本人が脚色に携わると同時に自ら教師役として出演している。

 フランソワ(フランソワ・ベゴドー)はパリ20区のある中学校のフランス語(日本風で言えば国語)の教師。この中学では生徒の大半が移民の子弟で、母語も出身国もバラバラ。フランス人の親は、この学校はレベルが低いから自分の息子は転校させたい、と言い出すような学校であり、教師の中でも、レベルの低い馬鹿どもを相手に小学校で教えるようなことから教えなきゃならないのは耐えられないと愚痴をこぼすような者がいる状況。そんな中で、フランソワはフランス語が母語でもなく勉強に苦労している子どもたちの力に何とかなろうと、理想主義に燃える教師であるが、現実は情熱だけで解決できるような簡単なものではない。
 子どもたちのフランス語の力は、確かに日常会話ならほぼ不自由なく使える。しかし動詞の活用は不確かだし、文語で主に使われる接続法の活用や、抽象的な単語は十分な理解が出来ない状況。さらに、ちょっとすればすぐ注意力がそれたり、教師の指示に従おうとしない生徒たちに手を焼く毎日。生徒の反抗的な態度に、フランソワ自身、頭に来て椅子を蹴飛ばして憂さを晴らすことも。
 しかし、生徒たちが教師を恐れなくなり指示を聞かないからと、ポイント減点制を導入し、一定のポイントに達した生徒は教育委員会に退学を諮ることにしようという一部の教師の提案には、フランソワは断固反対する。また、親がフランス語を話せず、本人も自分の学業に自信を持てない生徒の長所を発見して、彼の才能を発揮できる機会を作り、学業を続けさせる意欲をかき立てることにも成功する。
 しかし、生徒の成績評価会議に、生徒代表としてオブザーバー参加していた二人の女子生徒が、無責任にもそこでの会議内容をクラス内で話し、成績の悪い生徒を馬鹿呼ばわりしたことに対し、フランソワは怒って、ついその生徒をpetasse(ずべ公、売春婦)と呼びつけてしまうことで、彼のクラスにおける信用は瓦解してしまう...

 本作品はいわばフランス版「金八先生」といったところだが、決して「金八先生」のように、上手く収まってしまうのではない。彼の努力は一部功を奏しながらも、結局はほんの一瞬の失敗により全ての努力は水の泡となり、生徒たちとフランソワの間の信頼関係は崩壊する。さらに手を掛けた生徒から退学者も出てしまう。そして教師たちは、決して聖職者ではなく、悩み苦しむ人間らしい労働者として描かれる。全てが生々しく、あたかもドキュメンタリーの様にこの先どう転ぶか分からない緊迫感に溢れている、リアリティを突きつける映画。これらが、主演のフランソワも含めた殆ど大半が素人によって演じられたことが全く信じられない、奇蹟のような作品。だが、決して予定調和には終わらず、苦い後味と問題提起が残される。
 ちなみにフランソワのpetasseという発言、これはあたかも先日のイギリス労働党ブラウン首相の失言のようだ。たしかにブラウン首相の失言は政治家として、選挙候補者としては不適切な発言かも知れない。だが、相手の女性が短絡的に失業を東欧からの出稼ぎ労働者の責任に帰しているのは明らかだし、その彼女の発言を聞いて、「その通りだ。東欧の出稼ぎ労働者が全て悪いのだ。奴らを排除しろ」などと発言するよりは、「ひどい偏見だらけの女性だ、会わなきゃ良かった」という発言の方が余程人間としてまともなように思う。同じようなことがフランソワの失言にも言えるのではないか。
 しかし成績判定会議に生徒代表がオブザーバーとして立ち合うなど、彼我の学校文化の差には驚かされた。また生徒たちも、騒いだりするとは言え、基本的には先生に注目して欲しいし、先生とコミュニケーションを取ろうとする姿勢が、一般的な日本人あるいは日本の学校システムとかなり違うように思われた。

 監督のローラン・カンテは1961年フランス、ドゥー=セーヴル県、メル生まれ。1999年『人材 (Ressources humaines)』で労使対立に起因する労働者の苦難を描いて国際的に注目される。さらに2001年リストラされたものの家族に悟られないよう仕事に行くふりをする男を描いた『時間労働 (L'imploi du temps)』、2005年、1970年代末を背景に、ハイチへ黒人男を漁りに行く3人のフランス人白人中年女性を描いた『南へ (Vers Le Sud)』を撮っている。

 本作品は2010年フランス映画祭で上映されたほか、東京テアトルの配給で6/12より岩波ホールでのロードショーが決まっている。

原題『Entre les Murs』英題『The Class』監督:Laurent Cantet
2008年 フランス映画

DVD(US盤)情報
発行・発売:Sony Pictures 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby2 仏語 (吹替 英/西語)
本編: 130分 リージョン1 字幕: 英/西 (On/Off可) 片面二層 発行年2009年8月 希望価格 $28.99

国内公式サイト
http://class.eiga.com/




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パリ20区、僕たちのクラス
2008年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた作品。移民の子弟がい多いパリ20区にある中学校を舞台に、様々な子供たちとその担任との間に起こる出来事を1年間に渡って追いかけたドキュメンタリー風ドラマだ。本作の原作である「教室へ」の作者、フランソワ・ベゴドーが主演を務めている。監督はローラ・カンテ。24人の生徒たちはいずれも演技未経験ということに驚かされる。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2010/06/15 16:33
映画:パリ20地区 多民族国家ならではの教育現場に直面する、教師の苦闘
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2010/07/07 22:25
『パリ20区...』のローラン・カンテ監督作品『人事 (Ressources humaines)』
 『パリ20区、僕たちのクラス』が結構面白かったので、ローラン・カンテ監督、これ以前にどんな作品を撮っていたのだろうと情報を漁ってみたら、フランスで、『パリ20区、僕たちのクラス』のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞を記念して、ローラン・カンテ監督作品集DVDボックスが発売されているのを知った。そこでそれを通販で取り寄せてみたのだが、本作はその中の収録作品の一作で監督の1999年の作品。単品DVDでも販売されているようだ。インターンシップで故郷の父が働く工場に来たエリート大学生が、資本のロジッ... ...続きを見る
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ENTRE LES MURS(2008/フランス)【DVD】 監督・脚本: ローラン・カンテ 出演:フランソワ・ベゴドー/ローラ・バケラー/シェリフ・ブナイジャ・ラシェディ/ジュリエット・デマーユ/ダラー・ドゥコゥール ...続きを見る
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