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zoom RSS 死刑執行に苦悩する刑務官の姿を描いた韓国映画 『執行者』

<<   作成日時 : 2010/05/12 00:23   >>

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画像 2009年11月、韓国法務大臣は12年ぶりの死刑執行を決めた... というのはあくまでも映画の中でのフィクションであるが、日本映画『休暇』(監督:門井肇 原作:吉村昭)と同様、死刑を執行する執行官の心理に焦点を当てた作品。

 公務員試験に落ち続けてきて、公務員浪人生活3年目だったジェギョン(ユン・ゲサン)。だがようやく試験に受かって、念願の法務部(日本の法務省に相当)職員として就職することができた。だが彼の配属先は刑務所。
 彼はそこで、囚人たちに厳しい態度で臨む先輩の刑務官ジョンホ(チョン・ジェヒョン)から、囚人たちを扱う態度について徹底的に教え込まれる。「こういう手続きが決まっているのは刑務所と動物園だけだ。なぜなら気を抜いたら命が危険にさらされるからだ」「獣は強い奴には刃向かってこない」囚人たちは力で押さえ込むしかないと教えられる。
 その一方で、定年間近いキム刑務官(パク・イナン)の様に、死刑囚ソンファン(キム・ジェゴン)と将棋を指すのが日課となり、友達の様に接する刑務官もいる。だがいずれも、かつて同僚を囚人の反抗により失うという辛い経験を経てきたのだ。
 そんな中、最近死刑判決を受け、全く自分の罪に対して反省の色を見せない、10数人連続殺人犯チャン・ヨンドゥ(チョ・ソンハ)もこの刑務所に送られてくる。若いジェギョンは彼を見てむしろひるんでしまうのだが、ジョンホは決然とした態度で彼を制圧してしまう。
 ところが、ある日法務大臣は12年間中断してきた死刑執行の再会を決意し、死刑執行命令書が刑務所に伝達されてくる。12年ぶりの死刑執行命令書に戸惑い、パニックに陥る刑務官たち。その対象には最近送られてきた連続殺人犯も、そしてキム刑務官が毎日将棋を指していたあの還暦を迎えた死刑囚ソンファンも含まれていた。
 最も年齢が高く、死刑執行の経験も長いだろうと執行官になる様所長から要請を受けたキム刑務官は、とても自分には彼を殺せないと要請を拒絶。多くの刑務官が尻込みする中で、ジョンホは執行官を志願する。残る3人の執行官はくじ引きで決めることに。そしてそのくじの当選者にジェギョンがいた。そして2009年のクリスマスイブに執行が決定される。
 そのジェギョンは、刑務官として死刑囚の命を奪わなければならないと同時に、恋人ウンジュ(チャ・スヨン)が妊娠し、孕んだ子供の命を奪うかどうかの選択をも迫られていたのであった...

 死刑執行官という珍しい主題に光を当てた韓国映画。韓国では1997年に死刑執行された後、キム・デジュン、ノ・ムヒョンというリベラル政権の継続で、12年以上死刑が執行されていない。保守派のイ・ミョンバク政権に交代後、死刑の執行があるのではないかとの観測もあるが、映画とは異なり今のところまだ死刑執行はない。逆に死刑が執行されてしまうと、実際の政治的な論争に巻き込まれかねないので、むしろ死刑が執行されていないからこそ本作品の制作も可能だったと言うことができるだろう。事実映画の冒頭に「本映画の一部場面は大韓民国矯正行政現実とは無関係であることをお知らせします」との断り書きが入る。これは単純に考えれば情報不足で場面の再現が不十分であるとか、脚色されているということを示す意味で入れられているということなのだろうが、深読みすれば矯正行政批判や政治論争とは関係ありませんよと宣言しているとも受け取れる。

 実際、死刑の是非を巡る政治論争に巻き込まれまいとの姿勢があるよう感じられる。死刑制度に批判的ともとれる場面、ならびに肯定的ともとれる場面をバランス良く配置しようという意図がかいま見え、その分テーマの追求が甘いとの見方を許す構成になっている。印象的なエピソードも多いが、バランスを取ろうとしてか、そのエピソードと反対の意味合いを持つエピソードが並べられるような印象を持つ。しかし、映画の結末からは(死刑囚よりも)執行者自身の苦悩がかなり浮き彫りにされ、間接的にはやはり死刑制度の非人間性を批判していると考えられる。
 撮影も実際の刑務所の協力を得て撮影した部分があり(クレジットの最後に撮影協力として華城職業訓練矯導所(矯導所=刑務所)、ヨジュ矯導所、原州矯導所の名前が出てくる)韓国の法務行政に対するあからさまな批判ともとれるような内容にはしにくかったのだろう。
 そのような限界の中で、もし死刑制度を復活させたら(現在の韓国は明確に死刑制度は廃止していないものの、10年以上の死刑執行モラトリアムによりアムネスティから事実上の死刑廃止国との認定を得ている状況)という問題に対し、死刑執行に携わる刑務官の苦悩する姿を描くことで、その論争に一石を投じようという作品。

 ちなみにジョンホの様な力尽くで囚人を押さえつけようという刑務官は、監督のオーディオコメンタリーによると、10年程前まではいたものの、現在ではそのような態度で臨まない様刑務所内で指導されているので、あくまでフィクションだという。日本では2007年にも名古屋刑務所での刑務官による囚人の暴行事件で有罪判決が出されているぐらい(例えば読売新聞2007.3.30付け記事)なので、今や囚人に対する人権への配慮は日本の方が遅れているぐらいかもしれない。
 また、監督や俳優たちも今回の撮影で初めて刑務所の中に入り、刑務所の姿が工場か学校の様な近代的なものだったことに非常に驚いたという。多くの韓国人の刑務所のイメージは、西大門刑務所(現在刑務所博物館となっている)のような昔のものであり、今日の刑務所の現場のイメージが知られていないのだろう。韓国での観客動員数は38万人程度だったようだが、そういう今日的な刑務所のイメージを伝える映画としてまず韓国の中では受け止められたようだ。
 また死刑執行の刑場の再現に関しては、実際執行官の経験のある人がなかなか話を聞かせて貰えず、かなり想像を交えて作ったので、実際の現場とちゃんと一致するかどうかは分らないとオーディオコメンタリーにあった。

 なお、韓国での死刑執行は本映画を見る限り刑務所(矯導所)で行われるようだが、日本の場合は原則刑務所ではなく拘置所で行われる。

 監督のチェ・ジノ監督はCine21データベースによると東亜大学国語国文科卒業、『帰天図』(イ・ギョンヨン監督)『情事』(イ・ジェヨン監督)で助監督を務めた後、1999年短編『同窓会』で注目される。その後『最後の贈り物 - 帰休』の脚色を経て本作が長編デビュー作。

 本作品は、韓国では37万人程度の観客を集めた様だ。また、国内では2009年韓国映画ショーケースにて上映されている。

原題『집행자』英題『The Excutioner』監督:최진호
2009年 韓国映画

DVD(韓国盤)情報
発行・発売:ART Service 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編: 97分
リージョン3 字幕: 英/韓(On/Off可) 片面二層 発行年2010年3月 希望価格 W25300

コリアン・シネマウィーク2010 (韓国文化院サイト)
http://www.koreanculture.jp/info_news_view.php?number=1269

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