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zoom RSS 有閑階級の精神的漂流を批判的に描く韓国映画 『ペントハウス象』

<<   作成日時 : 2010/04/15 00:22   >>

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画像 韓国上流階級に属する三人の30代前半の男たちのアイデンティティ漂流生活を描いた作品。独特の雰囲気を持つ映画だが、好き嫌いがはっきり分かれる映画である。

 映画はヒョヌ(チャン・ヒョク)の家に刑事が訪ねてくるところから始まる。一体ヒョヌは何をしでかしたのか?
 写真家のヒョヌには子供時代からの竹馬の友、ミンソク(チョ・ドンヒョク)、ジンヒョク(イ・サンウ)がいる。ヒョヌはアイデンティティクライシスに陥っており、悪夢や妄想に苛まされる日々を送っている。彼は最近動物園から、園内の雄との虎と、中国の動物園にいる雌の虎を見合いさせるため、虎の見合い写真を撮るように依頼されている。
 整形外科医のミンソクは辣腕美容整形外科医で自分の病院を持っている。彼はヒョヌの妹スヨン(イ・ミンジョン)と結婚しているが、結婚生活は上手く行っていない。なぜならば彼には病的な浮気癖があり、自分のクライアントの数多くの女性たちとセックスしまくっているのだ。
 ジンヒョクは12年前にアメリカに移住。ファンドマネージャーとして成功して韓国に戻ってきた。実はジンヒョクはかつてヒョヌの妹スヨンに恋心を抱いていたが、彼女に相手にされないまま、アメリカに渡った過去があった。彼は韓国に戻ってスヨンに再会し、彼女と関係を持ち始める。
 3人は再会して一緒にルームサロンで飲み始めるが、二人の面前でホステスとセックスを始めるミンソクに呆れ顔。だが、ミンソクは、妻のスヨンがジンヒョクと密会している写真を入手した事から、妻に対し嫉妬に駆られると共に、さすがに自分の状態が病的である事を自覚して、何とか妻との関係を回復しようと、ヒョヌに付き添って貰って精神病院に相談に向かう。ヒョヌは付き添って行った病院で、チャン先生(ファンウ・スレ)という女医と出会い、自分の今の精神状態を言い当てられる。
 ヒョヌはそれが契機になって、数年前大邱で偶然に出逢って写真に撮った女子高生を捜しにジンヒョクと共に、大邱に向かうが、そこで知ったのは、彼女が大邱の地下鉄火災事件で亡くなったという衝撃的事実だった。
 一方、ミンソクは数多い女性関係を整理し始める。しかしその中のただ一人だけマンセン(チャン・ジャヨン)は、彼との関係を切る事を拒んだ。彼女に慰謝料代わりに車を与えて関係を切ろうとしたミンソクは、そのまま車の中で彼女と関係を持ってしまうのだった。だが、その彼女とのトラブルが、やがて3人を大きな厄災に巻き込む...

 朝日新聞の文芸時評で斎藤美奈子が、純文学と大衆文学との違いに関して非常に鋭い指摘をしているのを読んだことがある。即ち、最早その違いは題材ではない。大衆文学とて純文学と見まがう題材を使っているケースも多い。結局、その違いは何かというと大衆文学は起承転結をきちんと踏まえているのに対し、それに囚われない、むしろ外しているのが純文学なのだと指摘していた。
 その指摘を踏まえれば、本作品は大衆文学的映画作品としては失格である。映画の冒頭のシーンにつながるエピソードとは、ミンソクが女との関係処理に失敗して、3人がその厄災に巻き込まれるというお話である。だが、そのエピソードに直接関係ない寄り道的エピソードが満載で、ドラマトゥルギー的には余計な要素でだらだら長いという評されても仕方がない。おまけにエロ・グロ場面も多い。
 ただ、余計な夾雑物を切ればストーリーをすっきりさせればより良くなるかと言えばそうとも言えない。むしろ夾雑物にこそ捨てがたい魅力がある。実はミンソクの失敗のため3人がトラブルに巻き込まれるメイン・ストーリーラインは、実は主題ではなく、どうでも良いとも解釈可能である。むしろ寄り道が多くだらだらと長く(上映時間は145分)、枝葉のエピソードがごった煮になっていたり、それが醸し出す独特の違和感自体が、彼らの精神的彷徨と虚無生活をシンボライズしてるとも考えられる。そう考えると、本作品は新しい表現の次元を探った純文学的映画作品とも見ることが出来るだろう。
 ただ、そのような構成の作品は多数の人に受ける作品ではなかろう。監督のいささか露悪的な趣味・作風と相まって、韓国のWeb上での観客評は決して芳しくない。このあたり、よくお分かりの貴兄のみにお薦めできる映画である。

 本作品は日本未公開。最近かなりマイナーな作品も、なぜか国内DVDリリースされたりすることもあるが、少なくとも、いわゆる韓流ファンにはお薦め致しかねる作品。

 監督のチョン・スングは1975年生まれ。『クロッシング』『チェイサー』のエグゼクティブ・プロデューサーを経て、本作品がデビュー作。なお、本作はセックス接待を強要されたことを苦にして2009年3月自殺したチャン・ジャヨンの遺作で、図らずも映画での役と現実がオーバーラップする。

原題『펜트하우스 코끼리』英題『Searching for the Elephant』監督:정승구
2009年 韓国映画

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:PRE.GM 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編: 146分 リージョン3
字幕: 英/韓(On/Off可) 片面二層(2枚組) 2010 年 1月発行 希望価格W25300

▼2010.11.5 『ペントハウス・エレファント』の邦題で国内盤DVD発売

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