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zoom RSS ブラックな人間心理をえぐる 『人を探しています』 -韓国映画-

<<   作成日時 : 2010/03/13 09:29   >>

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画像 韓国映画2009年最大の問題作との呼び声もある、インディーズ長編映画。知的障害者への虐待と、その復讐を描いた作品。人間心理のブラックな側面を突きつける作品。

 40歳の不動産業者ウォンヨン(チェ・ミョンス)は、自分の欲望に忠実に生きる男。妻と二人の子供がいる傍ら、愛人イネ(キム・ギヨン)を囲い、更に女子高生タエ(ペク・ジニ)とも関係を持つ。店では客を待ちながら従業員といつも花札遊びに興じている。そしてもう一人の主人公、知的障害者のギュナム(キム・ギュナム)。彼はウォンヨンから、町内の犬がいなくなる度に、探し犬の張り紙を貼る仕事を貰って生活している。実はウォンヨンとギュナムは単に仕事を請け出す−請け負う関係のみならず、ウォンヨンはギュナムを自分のストレスのはけ口に利用しているのであった。
 ウォンヨンは北漢山麓の公園にある水道タンクにギュナムを呼びつけては、犬扱いしていじめてみたり、赤いマフラーの女に不動産契約のドタキャンをされて頭に来ると、ギュナムに赤いマフラーを着せて、その女に見立てて殴りつけてみたり、自分の店の前のライバル店に顧客を奪われると、ギュナムに杖を持たせ、その老店主に見立てて蹴りつけてはストレスを解消するといった有様。
 やがて、自分を犬と同一視し始めたギュナムは、ウォンヨンにさらって殺すよう命じられた犬たちを自宅に連れてきて、犬と共に自分もドッグフードを食べるようになる。更に町内から犬ばかりでなく、人まで消え始める...

 差別される存在、弱い存在に対して弱いものいじめをしてストレスを解消するというブラックな人間心理が赤裸々に剥き出しに表現されると共に、その弱い存在からまさに窮鼠猫を噛むということわざ通りに逆襲されてしまうという物語。ウォンヨンによって「飼」われ、犬のように扱われてきたギュナムは、自分を積極的に犬と位置付けることによって、ウォンヨンによって殺された犬たちを人間のように大切に葬る一方、逆に人間たちを犬のように扱い始める。
 韓国社会では、日本とは異なり、乞食たちが自分の持つ障害や哀れっぽさをわざわざ強調して生存する姿をよく見かける。また、現在でも戦闘的な労働運動が盛んであるが、それは決して労働者の権利が大切にされてきたからではなく、経営側によって依然労働者への蔑視がひどいことの裏返しであったりもする。そういった、強者−弱者、差別者−被差別者の「対抗的相補」関係1)の存在が社会的に支えられる心理を剥き出しに描き出した作品に思える。
 だが、それは単にお隣の社会の話に済まされるものではなく、日本においても中学生たちがホームレスなどを襲撃する心理とも通底するものがある。そういう人間の後ろ暗い心理を剥き出しに描くと同時に告発する映画だと言えよう。

 なお、ストーリー上説明不足で、どこまでがウォンヨンの意思でどこまでがギュナムの意思なのか曖昧な部分がある。最後の方でイネの犬がギュナムによって連れ去られてしまうのはウォンヨンの命令によることが明らかになるのだが、だとすると最初にバウが連れ去られてしまったり、あるいはライバル不動産店主が殺されてしまうのは、ウォンヨンの指示だったのか、それともギュナムが自発的にやったことだったのかが分かりにくい。おそらくギュナムがウォンヨンから受けた仕打ちを、そのまま(自発的に)実際に具現してしまう(そのことを通して健常者社会に対する復讐を果たす)、ということなのだと思うが... また、犬の失踪→犬探しのビラ貼りもそもそもウォンヨンの発案によるマッチポンプではないかという気もするのだが、それにしては報酬額が少ないし...

 また『人を探しています』という題は、当初、犬が失踪すると「犬を探しています」という張り紙を貼っていたのが、人間が失踪するようになって、それが人に変わったというところから名付けられている。

 なお、本作品のイ・ソ監督は2004年『비탈거미(谷地蜘蛛)』でプチョン映画祭、およびMise en Scene短編映画祭(韓国)2)を通じて注目を浴び、2005年には『マラソン』の助監督を務める。本作が初長編作品。

1) 対抗的相補性: 一見対立するように見えて、実はお互いの存在を支え合っている関係。例えば、日本の自衛隊と北朝鮮の関係、あるいはアメリカのブッシュ政権とアルカイダの関係がそうである。自衛隊(を増強すること)と北朝鮮の存在は対抗関係に一見見える。しかし、北朝鮮の脅威があるからこそ、日本国内で自衛隊への支持が揺るぎないものになるのだし、場合によっては増強していこうという話にもなる。また、北朝鮮国内にとっても、日本が自衛隊を増強し脅威が増しているという話を国民に流布することで、金正日の経済失政にもかかわらず、金正日政権への支持をつなぎ止めることができる。
 しかし、万一北朝鮮が民主化されてしまうと自衛隊の存続意義が大幅に低下してしまう。かといって中国を仮想敵国に仕立てることは、日本の中国への経済依存度がきわめて大きくなってしまった今日、日本経済に大打撃を与えかねず、事実上不可能である。
 そういった意味で、日本の自衛隊と北朝鮮の金正日政権は、お互いの存続にとって持ちつ持たれつの必要不可欠な存在なのである。

2) Mise en Scene映画祭: 原語表記미쟝센 영화제 元々Mise en Sceneはフランス語で「撮影」の意味。公式ホームページ http://www.msff.or.kr (IEのみ、韓国語)

原題『사람을 찾습니다』英題『Missing Person』監督:이서
2008年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行・販売:WIDE MEDIA 画面: NTSC/16:9(1:1.78) 音声: Dolby2 韓国語 
本編: 96分 リージョンALL 字幕: 韓/英 片面二層 2009 年 12月発行 希望価格W19800

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2010/05/19 12:47

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