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zoom RSS イ・マニ監督の遺作『森浦(サンポ)へ行く道』DVD化

<<   作成日時 : 2010/02/11 01:46   >>

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画像 日本で斎藤耕一監督が『約束』としてリメークした名作『晩秋』(なお原フィルムは失われている)で知られる、イ・マニ監督が1975年に製作した遺作となるロードムービー、『森浦へ行く道』。韓国映像資料院によるイ・マニ作品のDVD化は本作が初めて。

 冬の最中、工事現場を転々とする若き労働者ノ・ヨンダル(ペク・イルソプ)は食堂の女主人と深い仲になった挙げ句、そこから逃げ出した。その道で、中年のチョンという男(キム・ジンギュ)に出逢う。彼は刑務所を出て10年ぶりに故郷の森浦へ向かうという。二人は雪道を同行しながら、腹が空いて食堂に入る。そこの女主人から、逃げ出した酌婦ペッカ(ムン・スク)を捕まえて取り戻してくれたら10000ウォンをやると言われ、彼女を捜すために、わざわざ遠い道を選び駅に向かって歩いていく。そして、橋の下でくだんのペッカを見つける。何とかペッカを食堂に連れ戻そうとするが、説得に応じず、結局3人で駅に向かって歩き始める。
 途中、空腹を満たそうと葬式を行っている最中の家に上がり込み、故人の知人のふりをしてご馳走にありつくが、酔って良い気持ちになり、大騒ぎした挙げ句、その家から追い出されてしまう。
 こうして3人で珍道中を繰り広げているうちに、互いの境遇を知るようになり、ヨンダルとペッカの気持ちが近づいていき、チョンはその二人を見守る父親のような立場になる。しかし、ある晩、ヨンダルとペッカは口げんかし、ペッカは一人町に出て行ってしまう。ヨンダルにペッカと暮らすよう忠告するチョン。二人はペッカを探しに町に降りていった...

 まず、印象深いのは韓国の寒々とした雪深い冬の景色の美しさ。これほど雪景色が印象的な韓国映画は他にない。叙情的な作品に定評のあるイ・マニであるが、その美しい雪景色を背景に3人が徐々に心を寄せ、通い合わせ、助け合うようになる様が暖かい視線でかつ印象的に描かれる。彼らの背景にある雪景色は、厳しい韓国社会を生き抜いていく、韓国社会のセーフティネットから外れた3人の生き様の厳しさを象徴していると言える。
 それとともに気付いたのは、1970年代は、勿論バスが発達しつつあったとはいえ、まだ徒歩で旅をする人々が珍しくなかったのだな、ということ。イム・グォンテク監督の名作『西便制』にも、徒歩で旅をするパンソリ芸人の姿が描かれていたが、そういった旅人(ナグネ)の姿が似合った最後の時代が1970年代だったのだと感じさせられる。
 最後の結末には賛否が分かれそうだ。ただ、一つ言えるのは、ヨンダルがペッカの過去を蔑んであのような行動に出たのではなく、何と言っても今のままペッカと暮らしていけば、男が立たない、男がすたるという男の美意識、自尊心の問題があるということと、もう一点は、行き当たりばったりと言えばそれまでだが、漂泊の内に会うべき人には会えるはずという、そんな世界観があるのではないかということ。
 このような韓国の古典的な美意識や人を思いやる、微妙な心の動きをロードムービーという形式に載せて描いた、イ・マニ監督の叙情性を十分に示す作品が本作品である。

 なお、本作品は1996年「韓国映画祭1946→1996」で国内公開されたほか、福岡市総合図書館にフィルムが収蔵されているようだ。

 なお、DVDは部分的に傷が残る場面はあるものの、韓国古典映画としてはかなり良くリストアされている。最後の巻はどうやら韓国国内では失われて、ベルリン映画祭出品用フィルムを持ってきたらしく、ドイツ語の字幕が焼き込まれているが、キム・ギヨン作品の同様のフィルムよりかなり状態がよい。フィルムは銀残しで現像されたのか、かなり渋いカラー。それが、韓国の冬の光景に上手くマッチしている。
 なお、最近韓国映像資料院のDVDは日本語字幕のあるものが増えているが、本作に関しては残念ながら日本語字幕はない。また、韓国語、英語で書かれた解説パンフレットが付属している。

原題『삼포 가는 길』英題『The Road to Sampo』監督:이만희
1975年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行 韓国映像資料院/Blue Kino 販売:Blue Kino 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby1 韓国語
本編: 101分 リージョンALL 字幕: 韓/英 片面一層 2009 年 12月発行 希望価格W15400

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
 初めまして、SARUです、どうもです。
 まあご存じかと思いますが、「森浦へ行く道」は、福岡市総合図書館シネラに所蔵されているフィルムをもとに日本でビデオが発売されたことがあります。
「韓国映画文庫」シリーズの一つとしてですが、新宿か渋谷のTSUTAYAに今もあるかどうか・・。
 ではでは。
SARU
URL
2010/02/14 16:28
ご指摘有難うございます。
そういえばSARUさん、以前「ソチョンのホームページ(現キネマコリア)」の掲示板でお名前をお見かけしたかと... 今後ともよろしくお願いします。
yohnishi
2010/02/14 20:58
 まあ、シネマコリアにも書いたことはないわけではないですが、今は無き「韓国映画同好会」にお邪魔しておりました。
 ところで、私が今、お邪魔しているところが掲示板なのでトラックバックというわけにはいかず、リンクを張らせていただくことをお願いしたいなと思っているのですが、いかがでしょうか。
 特に「パジュ」など、こちらの作品紹介や感想などを掲示板上でも紹介できたらと思っております。
 この場所に書くのはあまり適切ではなかったかもしれません、すいません。
SARU
URL
2010/02/17 01:06
ありがとうございます。リンクはご自由に貼って頂いて結構です。特に断って頂く必要はありません。
yohnishi
2010/02/17 01:18

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