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zoom RSS 韓国男性社会批判の視点が強い『私の友達、その妻』 -韓国映画-

<<   作成日時 : 2010/01/11 22:06   >>

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画像 『訪問者』『バントゥビ』を撮った、シン・ドンイル監督の長編第2作目。韓国社会における、多少男色めいた男性至上主義的な社会風土を批判しようという意図が明確な作品。

 主な登場人物は新婚ほやほやの調理師のジェムン(パク・ヒスン)とその妻で美容師のジスク(ホン・ソヒ)、そしてジェムンの軍隊時代からの友人で、元学生運動家、現在ではバリバリの辣腕外国為替ディーラーであるイェジュン(チャン・ヒョンソン)。ジェムンは最新美容技術を学びたいというジスクの希望でアメリカに渡ろうと準備を進めていた。ところがアメリカへの移民資金を渡した相手に騙されて、資金をすべて失ってしまう。そればかりかホームレスにもなりかねない危機に陥ってしまう。そこを救ったのがイェジュン。自分が稼いだ取引のコミッションをジェムン夫婦を救うべく貸し付ける。
 やがて、ジスクは妊娠する。妻が妊娠したことを話すジェムンに、イェジュンは男の子だったらミンヒョク(民革=民衆革命の略)、女の子だったらジェニー(マルクスの妻の名)にしたらと提案する。やがて生まれた男の子はイェジュンの提案どおりミンヒョクと名づけられる。ジェムンとジスクは共働きながらも子育てや家事は主にジスクに委ねられ、家事ばかり自分に押し付けられると不満に感じ始め、夫に対する態度も刺々しくなるジスク。やがて、パリで4泊5日で美容技術を磨く研修会が開かれると知り、ジスクはそこへ出たいと夫に話す。妻のガス抜きが必要だと判断したジェムンは、その間休みを取り、この世話を見ることを約束する。
 妻がパリへ出ている間のある晩、久しぶりにイェジュンがふらりとジェムン宅に訪れる。彼の取引での大成功とプロモーションを祝う酒宴で、同僚のやっかみにあい、不愉快になり中座してやってきたのだ。ところが、ジェムンが泥酔したイェジュンに代わり彼の車を移動させれているうちに、イェジュンがミンヒョクをあやしていて誤って死なせてしまう。ジェムンはイェジュンに早く出て行くよう言い、自分がすべての罪をかぶることを決意する。
 ジスクが家に戻ってみると、ジェムンは警察にも連絡せず家で茫然自失していた。その結果ジェムンは過失致死で刑務所に収監されることに。ジェムンにジスクの世話を頼まれたイェジュンは、ジスクをニューヨークへ美容修行に旅立たさせる。さらに、ジスクが帰ってきた後は彼女の美容室の開業資金まで用立てる。その一方刑務所から出てきたジェムンにも資金提供をし、フライドチキン店を開かせる。だが、イェジュンはなぜかジェムンとジスクを会わせようとしない。
 やがてニューヨークへの派遣が決まったイェジュンはジスクに求婚する。だが、なぜかイェジュンの態度がおかしい...

 シン・ドンイル作品を3作見てみると、この監督は社会批判的な視点が強いのと、かなり理詰めで映画作りをしているという特徴が見受けられる。
 ジェムンとイェジュンの友情はユン・ジョンビン監督の『許されざるもの』に描かれたような、おそらく韓国人以外が見れば男色的とも見えかねないような(おそらく韓国人自身はそれに自覚がない)、濃密な友情関係。その関係の怪しさをカリカチュア的に描いている。と同時に、家庭内における男性至上的な関係性もカリカチュアされている。妻との関係よりも優先される男同士の友情関係(男の子の名は妻の希望も聞かずイェジュンの提案どおりに名づけられたり、ジェムンはイェジュンを妻の目の前からあくまでかばうなど)、そして家族の方向性は、一見女性を大切にするようでいて、実はすべて男性(それがジェムンであれイェジュンであれ)が決定する。そもそも女の子が生まれたらマルクスの妻の名ジェニーにしようというエピソードも、マルクスが私生活では夫として相当わがままで度し難い存在であり、ジェニーがそのフォローに追われていたことを考えると、まさに象徴的なエピソードなのである(男二人の関係をマルクスとエンゲルスの関係に重ね合わせているとも見える)。
 そう考えると、ジスクの最後の作戦は、韓国における男性至上社会に対して仕掛けたクーデターであるのだ。

 このように見ると、本作品の脚本は、日本の大島渚作品のように極めてロジカルに構成されていることがわかる。ただ、シン・ドンイル作品の欠点は論理性が先走って、若干情感的に無理がある部分が散見される点。本作品にも若干その欠点が見られる点が残念である。

 なお、『バントゥビ』で主役を演じたマブブ・アラムが本作品でも外国人労働者の端役で出ている。なお、本作品は日本未公開。

原題『나의 친구 그의 아내』英題『My Friend & His Wife』監督:신동일
2008年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行・販売:Prime Entertainment 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語
本編: 111分 リージョン3 字幕: 韓/英 片面ニ層 2009 年 2月発行 希望価格W

シン・ドンイル監督『バントゥビ』作品評
http://yohnishi.at.webry.info/200911/article_3.html

シン・ドンイル監督『訪問者』作品評
http://yohnishi.at.webry.info/200810/article_15.html

2012.10付記
その後、この映画が批判しているのはアメリカのジェンダー研究者イヴ・セジウィックが提唱した、「ホモソーシャル」概念が示す状況であることに気づいた。

男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望
名古屋大学出版会
イヴ・K. セジウィック

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