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zoom RSS 新田たつおの漫画「チェン爺」を原作とした韓国映画『ザ・ゲーム』

<<   作成日時 : 2009/09/14 08:02   >>

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画像 日本の漫画原作ということで、韓国社会のコンテキストと関係のない作品に仕上がっているのではないかと余り期待しないで見た映画『ザ・ゲーム』。だが予想外に韓国社会に対する批評的側面のある映画に仕上がっており、面白かった。貧乏だが健康な体を持つ若者が、大金持ちだが老いて先の短い体をもつ老人と体を交換してしまうというテーマのスリラー作品。監督・脚本は『マヨネーズ』『僕が9歳だった頃』のユン・イノなので、やはり手堅く仕上がっている。

 道端で肖像画を描いて暮らしている若く、貧しい画家ミン・ヒド(シン・ハギュン)。彼の下にある日、悪戯電話とおぼしき訳の分からない電話がかかってきた。悪戯電話だと思って無視していると、しばらくしてある女性が下宿に尋ねて来て、お願いがあるという。その女性の懇願に負けてついていくと大きな屋敷に連れて行かれ、そこでカン・ノシク(ビョン・ヒボン)という老人から、大金と彼の体を賭ける賭を提案される。勿論ヒドは馬鹿馬鹿しいと拒絶するが、ガールフレンドのチュ・ウナ(イ・ウンソン)の家が多額の借金が返せず苦労している状況を見て、彼は賭けに乗ることにする。だが彼は賭けに破れノシクと体を交換されてしまう。
 手術でヒドと体を交換したノシクは、ノシクは死んだことにし、自分はノシクの養子になったカン・インシクだと名乗り、自分の金融会社をそのまま引き継ぐ。さらに手当たり次第金を使って女遊びを始めるが、女たちは彼の手術跡を怖がって、なかなか思うに任せない。そこでヒドの彼女だったウナに目をつける。
 一方体を交換され放り出されてしまったヒドは、叔父のミン・テソクに何とか信じて貰って、体を元に戻させるべく、ノシクから放り出されたノシクの妻、イ・ヘリ(イ・ヘヨン)に近づこうと工作を開始する。
 果たしてヒドは体を取り戻せるのか...

 本作品は、容貌至上主義で整形手術の横行する韓国社会を揶揄したものともとれる。また老人が若者になり若者が老人になるという設定からくる、儒教的な韓国社会を裏返してみせる異化作用を通じて、改めて韓国社会の無意識的な社会コードを顕在化させるという、一種のエスノメソドロジー的1)思考実験の趣・面白さがある(逆に韓国社会の実情について疎い人はこの面白さの部分は何気なく見過ごしてしまう部分かも知れない)。恐らく演じる俳優は言葉遣いなどかなり違和感、抵抗感を感じながら演じたことだろう。またこの面白さは、何と言っても『JSA』や『地球を守れ』等でお馴染みのシン・ハギュン、そしてポン・ジュノ作品の『吠える犬は噛まない』『殺人の追憶』で個性的な演技を見せたビョン・ヒボンの演技力に与っている部分が少なくない(演技がぎこちないと異化作用の面白さが台無しになってしまう)。またガールフレンド役のイ・ウンソンは鈴木杏そっくり。ノシクの妻役のイ・ヘヨンは太めの浅丘ルリ子という雰囲気で声質も似ている。
 ただ残念なのは最後の謎解きが若干曖昧になってしまった点。この曖昧さは、DVDのオーディオコメンタリーを聞くと、意図的に曖昧にして視聴者の解釈に任せるつもりだった訳ではなく、単に説明不足に起因するものの様だ。

 本作は日本未公開。

 以下、最後の曖昧な場面に関する解説を付すが、未見の人への配慮から、読みたい人は、マウスで範囲指定して反転させて読んで欲しい。
 結局ヒドがノシクの体提供者に選ばれたのは偶然ではなく、手術を行った博士が(半分は復讐の意味も込めて)、ヒドがノシクの息子であることを調べて選んだのであった。だがノシクはヒドが自分の息子だとは知らなかった。ヒドは結局最後の賭にも負けて、記憶までノシクに奪われてしまうのだが、ノシクは他人から若さを徹底的に奪ってしまう代償として、自分の息子・子孫を失ってしまうと言う、韓国的な文脈では非常に決定的な自業自得の打撃を受けてしまうことになる。そのことから欲張りすぎると結局自分自身に罰として帰って来るという教訓的内容を狙ったものである。但し実はヒドがノシクの息子だったという設定を、以前に映画の中に提示しなかったため分かりにくくなってしまった(以上の説明はDVDのオーディオコメンタリーを参考にして作成)。
 なお、筆者の考えではこのような因果応報的な結末よりも、新しい体を手に入れたノシクがヒドの記憶までを移植することによって新しい体のノシクの人格が消え、ヒドの人格になってしまうという話しに持っていった方が、そもそも人格とか個人の同一性とは何かという哲学的な問題提起を、ちょうど『ブレードランナー』のように出来たのではないかと思う。



1)エスノメソドロジーについては下記を参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%83%A1%E3%82%BD%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC

原題『더 게임』英題『The Game』監督:윤인호
2007年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行・販売:Prime Entertainment 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語
本編: 116分 リージョン3 字幕: 韓/英 片面ニ層2枚組み 2008年4月発行 希望価格W9900(期間限定割引価格)

ユン・イノ監督作品『マヨネーズ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200810/article_4.html

▼『ザ・ゲーム』国内盤DVD刊行 2011.12.2 アメイジングD. C.より



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