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zoom RSS 社会的排除を受けた人々を描く『うちへなぜ来たの』 -韓国映画-

<<   作成日時 : 2009/08/10 00:42   >>

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画像 興行成績的にはあまり芳しくなかったようだが(韓国2009年4月9日封切り)、問題意識のはっきりした韓国映画『うちへなぜ来たの』。社会的排除を受けた二人の偶然の出会いを描いた作品。

 ソウルに住む、元エリートサラリーマンだが現在失業中のビョンヒ(パク・ヒスン)。彼はある日突然、江原道束草で死亡したホームレスの女性、スガン(カン・ヘジョン)の件で警察の尋問を受ける。一体この二人の関係は如何に?

 ビョンヒは美しい妻と出会い、ソウル市内に一戸建て住宅まで購入する順風満帆のサラリーマンだったが、ある日突然家の前で妻が通り魔に殺されることから彼の生活は一変する。彼はPTSDに悩まされ、仕事が続けられなくなり退職。絶望の中で生きる気力を完全に失い自宅で自殺を試みる。ふと気づくと彼は手足を縛られ家の中で転がされていた。実は彼の家に侵入したホームレスのスガンによって、命を救われ、なぜか手足を縛られたのだ。最初は彼女の悪臭に悩まされたが、徐々に慣れてくるうちに、彼女が何しに来たのか延々と長い話を聞かされることになる。
 スガンはかつて束草の丘の上の一軒家に一人で暮らしていた。だが学年が遅れて、数えで20歳の高校3年生だった彼女は近隣の子たちから「気狂い女」扱いされ一人孤立していた。しかしある日、近所の中学生から石を投げつけられた彼女にやさしく声をかけてくれた男の子がいた。それが当時5歳年下の中2だったジミンだ。
 やがて二人は恋人同士の関係に発展する。他の生徒たちに隠れて体育館の倉庫で会ったり、丘の上の自宅で会ったり。しかし、周囲から彼女が「気狂い女」扱いされているのを憚って、ジミンは皆の前では彼女と親しい様子は見せないのだった。そんなジミンが、周囲を気にして彼女を避けるようになるにはさほど時間がかからなかった。避けられれば避けられるほど、彼をストーキングしてしまうスガン。そんな彼女を嫌ったジミンは春川の学校に転校してしまう。それでも彼を追いかけて春川にまで出かけた彼女はコンビニでの食料の窃盗で警察に捕まり、刑務所に収監される。
 刑期を終え刑務所からでたスガンは、ジミンがソウルに移ったとの話を聞きソウルに出てくる。彼女は彼の様子を探りながら、最初は水商売についたりしていたが、やがてホームレスにまで転落。ビョンヒの家に潜り込んだのも、今ジミンの住んでいるアパートがよく監視できるからという理由だった。
 そして、スガンは捨てられた恨みを晴らすため、ジミンの隙をうかがって拉致し、ビョンヒの家の庭に埋めてしまおうとしているのだった。だがその一方でスガンはビョンヒと奇妙な共同生活をしながらビョンヒとの間に暖かい気持ちが芽生え始める。
 そしてある大雨の日、ついにスガンはジミンの拉致に成功し、ビョンヒの家に連れ込むのだが...

 本作品を見て、ふと連想したのは、秋田の連続児童殺害事件の畠山鈴香被告。畠山被告の高校の卒業文集に同級生から罵詈雑言を書きまくられていたと言われているが、畠山被告にスガンの姿がダブってくる。まさに社会的排除を受けた存在である。
 一方、ビョンヒも一時は成功者だったが、PTSDをきっかけに一挙に社会的排除を受ける存在に転落。これも近年の未曾有の不況下において社会的セーフティネットの網に漏れて転落していく人々を象徴する存在とも言える。

 そもそも韓国社会は、体制の度重なる変転とそれに伴う人々の社会制度への不信等に起因して社会制度的セーフティネットが弱い。それを補うものが親族関係のセーフティネットである。韓国において家族、親族関係が強い、熱い、というのも単なる感情的な問題ではなく、社会制度的セーフティネットが弱いからこそその代替手段として、家族、親族関係を保たなければならないという極めて実用的な理由もあるのである。
 ところが孤児であるなど、何らかの理由で親族セーフティネットワークに救われないと非常に悲惨なことになる。もちろん順調であればそれでも問題はないだろうが、一旦生活危機に陥ると一挙にどん底に転落してしまう。このような親族ネットから漏れた人の救いをテーマにしたのが、例えばソン・ヘソン監督の『私たちの幸福な時間』。
 『私たちの幸福な時間』では親族ネットの代替になるものはキリスト教であったけれども、本作品では親族セーフティネットから漏れ、社会的排除を受けるもの同士の相互理解(による自己救済)という方向に踏み込んだ作品といえる。

 そういう意味で、未曾有の大不況による社会的・経済的転落の増大、そして韓国においても問題になっているであろう人間関係の希薄化という状況を踏まえた、非常にタイムリーな問題提起作、意欲作と言えると思う。
 とは言え、映画の最初がスガンの死から始まる本作品は、精神的救済はあったとしても、ハッピーエンドでは最初からありえないという点が、不況と政治的閉塞状況に打ちのめされている韓国の人々を勇気付けることにはつながりにくく、そのあたりが本作を見た人の評価が比較的高いにもかかわらず、今ひとつ客足の伸びなかった原因になったと思われる。

 監督のファン・スアは女性で、シネ21データベースによるとニューヨーク大で映画を専攻。2002年の「恋歌II」をはじめとするミュージックビデオやCFを多数手がけ、本作品が初長編劇映画監督作品。
 主演のパク・ヒスンは『セブンデイズ』、『ファミリー』などに出ていた個性派。カン・ヘジョンは動画映像を見れば表情にかつての面影が残っているものの、スティル画像(上のアウターケースの写真参照)を見る限りは全く没個性な顔になってしまい、本編を見るまでカン・ヘジョンが出ているとは分からなかった。これ歯列矯正などやらなければもうちょっと客が入ったような気が...

 なお、本作品の韓国版DVDについて注意を一点。DVDの化粧アウターケースには、字幕に韓国語、英語と書いてあるのだが、中のキープケースには字幕は韓国語のみとなっており、実際のディスクはやはり韓国語字幕のみとなっている。通販サイトなどにはアウターケースを見て字幕:英語/韓国語と書かれている場合が殆どだと思うので、購入の際は十分ご注意を。

付記: 本作品はコリアン・シネマ・ウィーク2009で上映予定。DVDは韓国語のみなので、韓国語の分からない方はこの機会をお見逃しないよう。
http://www.koreanculture.jp/info_news_view.php?number=897

原題『우리집에 왜 왔니?』英題『My Home (またはWhy Did You Come to My House?)』監督:황수아
2008年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行:Planis Entertainment 販売: Platys ENT 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語
本編: 107分 リージョン3 字幕: 韓 片面ニ層 2009年7月発行 希望価格W27500

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