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zoom RSS チャン・リュル監督の初の韓国を舞台とした作品『イリ』

<<   作成日時 : 2009/06/02 00:58   >>

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画像 『キムチを売る女』『境界』を撮った中国朝鮮族の映画監督チャン・リュル監督の最新作品。ずっと韓国からの投資を受けて制作を続けてきたが、今回の作品は初めて韓国が舞台になっている。映画の題名『裡里(イリ)』とは現在の全羅北道益山(イクサン)市の旧称。湖南線から全羅線、群山線(現長項線)が分岐する、鉄道の拠点都市となっている。ここでは1977年、火薬を積んだ貨物列車の大爆発事故があり、大勢の市民が犠牲になった大惨事で名を知られた。しかし30年経ち、市の名前も変わりこの惨事は多くの人の脳裏から忘れ去られつつある。

 時は2007年、折しも爆発事故30周年を記念する追悼行事が行われようとしていた。この町でタクシー運転手をしているテウン(オム・テウン)。彼は30年前の事故で両親を失い、その事故の際、母親のお腹の中から早産で生まれたため知恵遅れとなった妹ジンソ(ユン・ジンソ)と二人暮らし。ジンソは、自分たちの住む団地の敬老会館の手伝いをしたり、その隣の中国語教室の手伝いをして暮らしていた。しかし人々はジンソが知恵遅れであることを良いことに、ただ働きさせたり、ひどい場合は知恵遅れで拒むことを知らないのにつけ込み強姦したり... その日も突然中国語教室で倒れ、病院に担ぎ込むと流産しているのだった。
 その度に、テウンはジンソの後始末に回ったり、ジンソの弱みにつけ込もうとする人々のところに怒鳴り込みに行ったり... しかし、テウンは段々自分たちの弱みにつけ込もうとする人間の多さにほとほと嫌気が差し、ジンソを連れ海に向かうのだった...

 チャン・リュル監督の作品を3作見てきて何となく彼の作風が分かってきた。まず、題材に世間から忘れ去られた盲点となっている人々に焦点を当てようとすること。1作目の『キムチを売る女』は中国人社会の隙間で懸命に生きようとする朝鮮族の女性、2作目の『境界』ではモンゴルから亡命しようとする北朝鮮脱北者(彼らの存在は、最早現在の韓国社会からは殆ど忘れ去られた存在である)。3作目の『裡里』では、忘れ去られた裡里の鉄道爆発事故を象徴するような、社会の片隅に忘れ去られ、肩を寄せ合って生きる孤児の兄妹。2点目は大島渚のように極めてロジカルに脚本が組み立てられていること。『裡里』では、忘れ去られた鉄道爆破事故と、障碍者や孤児といった社会的弱者が忘れ去られているという状況を2重写しにしながら象徴的に描くという、極めて意識的かつ論理的な構成を取っている。そして3番目としてその骨格を日常生活をじっくり描写する極めてミニマリスティックな映像で肉付けしようとする(大島渚であればロジカルな骨格を俳優の演技力に基づく情感で肉付けしようとするところだ)。
 ただこの3番目が問題で、1作目の『キムチを売る女』では、自分自身が朝鮮族であるという生活リアリティからその作戦は非常に成功したが、2作目、3作目では今ひとつリアリティが感じられず、どこか人工的な匂いが漂うような気がする。だからロジックとして言いたい主張は凄く良く分かるのだけれども、映画としての説得力としてどうも今ひとつ欠けるように思える。
 とはいえ本作品のお陰で、裡里の鉄道爆発事故という惨事の存在を知ることが出来た。

 因みに裡里市が益山市に変わったのは鉄道事故がきっかけではなく1995年の地方自治体の改変に伴い裡里市が益山郡と合併して名称が変更されたためなのだが1)、しかし現在全く「裡里」という名前が洞の名前ですら残っていないのは、やはりあの惨事を忘れたいという人々の願いからなのかと勘ぐってしまう。

 日本未公開作品。ローマ映画祭出品作。

1)「大韓民国地名便覧2001年版」日本加除出版参照。

原題『이리』英題『Iri』監督:장률
2008年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行: PRE.GM 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 韓国語 本編: 108分リージョン3 字幕: 韓/英 片面ニ層 2009年4月発行 希望価格W22000

『境界』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200901/article_11.html


キムチを売る女 [DVD]
オンリー・ハーツ
2008-01-18

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