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zoom RSS 保守化するアルジェリア社会を批判する映画『ビバ・アルジェリア』

<<   作成日時 : 2009/05/31 12:55   >>

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画像 2004年製作アルジェリア映画。監督のナディール・モクネシュはアルジェリアのアルモドヴァルの異名で知られているそうだ。確かにアルモドヴァルの作風に似ていなくもない。

 2003年冬。原理主義とテロリズムが忍び寄る首都アルジェの中心街。そこのマンションに住む3人の女性たちがこの映画の焦点である。一人は写真館に勤める27歳のグーセム。勤務態度は誉められたものではないが、都市生活を享受する女性。彼女は妻子のある病院の医師、アニスと愛人関係にある。毎月家賃の「援助」を受けながら時々病院で会ってはセックスする関係。彼は、妻には愛情はない、もうすぐ離婚して君と結婚すると言い続けて既に3年が経っている。そして彼女の母パピーシャ。夫は8年前に亡くなり、本人は「コパカバーナ」というナイトクラブで長年踊りと歌を披露して稼ぎ娘を養ってきた。しかしこれら「退廃的」施設に対する相次ぐ原理主義のテロリズムの影響でナイトクラブは相次いで閉店、彼女は失業し現在は娘の稼ぎに頼る状態。今や家でテレビを見てピザを食べることが唯一の楽しみ。もう一人は売春婦のフィフィ。明るく前向きな性格でパピーシャや周囲の住人からの蔑視をものともせず、グーセムの良き友人かつ理解者であった。

 ある日、グーセムは仕事帰りアニスとデートに出るが、彼が急に約束をキャンセル、むしゃくしゃした彼女はその足でディスコにより男を引っかけ公衆便所でコトに及ぶ。するとたまたまそこでアニスの息子ヤシーンが男といちゃついているところを見かける。その週末、本来グーセムとアニスは旅行に行く約束をしていたが、アニスはオランへ出張が入ったと急に旅行をキャンセル。仕方なく母のパピーシャの父の墓参りのお供をするのだが、行きがけにアルジェにいないはずのアニスの車を見かける。母は元「退廃」的職業人としてテロの標的になるのではないかと外出を恐れていた。墓参りが終わると、アニスといつまでずるずる付き合っているのかと母になじられたグーセムは、母を置いて単身アニスの自宅に乗り込む。しかし家の入り口で息子のヤシーンに「何しに来た、父とやるなら病院に行け」と阻止され「父親にホモだってバラされたいの」とすごむグーセム。むしゃくしゃしたグーセムはフィフィの客からピストルをくすねてしまう。
 その晩ヤシーンがグーセムの家に訪ねてきて「父は誰にでも嘘をついている。父を信じるな」と言われる。
 一方パピーシャはテロリズムにおびえて暮らす暮らしに嫌気が差し、自分の華やかな舞台であった「コパカバーナ」を何とか再開させようと現在の建物のオーナー捜しを始める。
 アニスとの関係に悩むグーセムを見かねたフィフィは、彼との関係をきちっと整理させるためにグーセムを、大金を積んで高名な占い師の元に連れて行く。その帰りグーセムとフィフィは別れた後、突然フィフィが行方不明になる...

 いずれもこの3人の女性(不倫する女、肉体をさらして踊る元ダンサー、売春婦)は伝統的な価値観やイスラム原理主義的考えからすれば、「退廃」的なけしからん存在であり、抹殺すべき存在である。逆に西欧的自由主義的な発想からすれば、自由のため自分の身の安全を犠牲にしても家父長的な伝統的な価値観と闘う女たちである。自分の国にいながら伝統的な価値観に挑戦することで、自らの国の中で居場所を失い、難民化していく女性たちの生き辛さを描くことを通じて、伝統的な価値観に対する異議申し立てをしている作品と言える。
 その一方でアルジェリアの都市生活の西欧化ぶりにも目を見張らされる。人々は日常的に皆フランス語を話し、アラビア語は最早伝統的歌謡の世界にしか残っていない。町並みは多くの表示はフランス語で一部アラビア文字の表記も残るものの、どこのフランスの都市か(或いはフランスのどこかの都市のアラブ人街か)と見まがうぐらい。
 こういうなかで、不倫、売春、ホモセクシュアル、風俗産業などの増加を、個人の自由領域の拡大と思う人ばかりではなく、古き「良き」倫理・秩序への挑戦であり、アラブ的、イスラム的価値観への挑戦であり、西欧的退廃価値観による洗脳であると見る人々も出てくるであろうことは想像に難くない。そう言う意味では、かの地におけるイスラム原理主義は、我が国における国籍法改正反対運動等に見られる右翼運動やアメリカのプロ・ライフ運動等に代表される宗教右派などと同じ位相にあると言えそうだ。もっとも日本の右翼運動はテロに走る程「元気」(?)がないという点はましと言うべきか。
 『ビバ・アルジェリア』という本作品の題名も相当の皮肉を込めた題名であると共に、監督自身本作品を撮り上げるには、身の危険を顧みない相当の覚悟があった筈だ。

 本作品は2004年横浜フランス映画祭および2005年アラブ映画祭で公開。国内一般劇場公開&ビデオはなし。

 監督のナディール・モクネシュは1965年パリでアルジェリア移民の両親の下に生まれ、アルジェに育つ。1984年フランスの大学入学資格を取得後フランスで2年間法律を学び、さらに2年間ロンドンで過ごす。1988年フランスへ戻り演劇を学び、1993-1995年はニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャルリサーチで映画を学び、さらにイタリアに渡ってペルージャ大学で美術史を学ぶ。その後1999年『マダム・オスマンのハーレム』で長編デビュー。

原題『Viva Laldgérie』監督:Nadir Moknèche
2004年 アルジェリア=フランス映画

DVD(US版)情報
販売: Film Movement 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 フランス語 本編: 113分
リージョン: ALL(表示は1) 字幕: 英語(On/Off可) 片面一層 2005年1月発行 希望価格$19.95 ※DVD-Rバージョン

『ビバ・アルジェリア』監督インタビュー Uni-France (日本語)
http://japan.unifrance.org/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/4999/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E7%99%BA%EF%BC%9A%E3%80%8E%E3%83%93%E3%83%90%EF%BC%81%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%80%8F%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC

「横浜フランス映画祭2004」 Cinema Journal
http://www.cinemajournal.net/special/2004/france/#s2

Nadir Moknèche (Uni-France 英語)
http://en.unifrance.org/directories/person/142374/nadir-mokneche

Viva Laldgérie (IMDB)
http://www.imdb.com/title/tt0348884/


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