yohnishi's blog (韓国語 映画他)

アクセスカウンタ

zoom RSS 韓国版「にあんちゃん」と言うべきか 1975年作品『母さんのいない空の下』

<<   作成日時 : 2009/02/16 12:19   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

画像 塩田で働く一家の子供たちが、貧困の中でも懸命に暮らしていこうとしていく姿を感動的に描く、イ・ウォンセ監督による1975年度製作(※DVDには1975年とあるが、各種データベースを見ると1977年映画とでているケースが多い)の韓国映画。映画の雰囲気としては韓国版「にあんちゃん」といったところか。DVD収録のプロダクションノートによると、当時としては大ヒットの11万の観客動員を記録しその後続編が2編作られた。また当時の朴正煕大統領が本作品を見ていたく感動し、全国の小学校に巡回上映を指示したという。おそらく韓国の386(→486)世代の多くが小学校当時巡回上映で見た記憶があると思われる。
 なお、本作品自体は日本で公開されたことがないものと思われるが、3番目の続編『ひよこたちのお祭り』については1979年韓国文化院の上映会で上映された記録がある1)。画像

 映画の舞台となっている場所は映画の中で明示されていないが、台詞に慶尚道なまりが強いので舞台は慶尚道南部が想定されていると思われる。村を通る鉄道は、韓国で当時唯一蒸気機関車が残っている路線だとのナレーションが入る。但し、画面に出てくる蒸気機関車の型式番号を見ると「ヒョキ」とあるので、鉄道は水仁線であり、ロケされた場所は仁川南方の塩田地帯だろう。
 キム・ヨンチュルの一家は塩田労働者の家族。小学校高学年でしっかり者の男の子ヨンチュルと、いたずら者で頑固な弟ヨンウンの二人兄弟、それに塩田で働く父と、海辺で貝(おそらく赤貝や灰貝)を取る妊娠中の母の4人家族。一家は塩田会社の社宅(といってもそれこそ昔の日本の炭坑住宅の様な家)に暮らしている。映画はずっとヨンチュルの視点から語られる。
 朝鮮戦争に出征経験のある父は、今で言うPTSDがあり、空を飛ぶ飛行機の爆音が聞こえると戦争当時を思い出し錯乱状態になることがあり、段々症状が悪化して来ている。会社の診療所に見せると大きな病院で診察して貰った方が良いと言われ、連れて行くとできるだけ早く入院させる様指示される。しかし妊娠中の妻を抱え、家も会社の社宅なので自分が入院すると一家が困窮するのではないかと心配した父は頑として入院しようとしない。
 やがて母親は子を産み、兄弟に弟ができる。父親の症状も段々深刻化してきたので、会社から、父親を入院させて誰か代わりに働く様にしてはどうかと提案される。そこで入院したがらない父親を家に残し、母が塩田に出る様になるが、塩田での仕事は元々男手が必要な重労働。妊娠直後の弱った体で、周囲が軽い作業をさせようと配慮しても頑として聞かず無理して男並みに働こうとして、ついに過労から亡くなってしまう。
 こうして一家を支える責任がまだ小学生高学年に過ぎないヨンチュルの双肩に掛かってくる...

 時代は1970年代前半、まだ漢江の奇蹟の恩恵もセマウル運動も及んでいない貧困にあえぐ韓国の田舎の厳しい生活環境、そして朝鮮戦争が人々の心に残した大きな爪痕を描いた作品。ある意味社会批判的映画ともとれるが、朴正煕鑑賞効果なのか末尾の方にとってつけたように「僕の日記が出版され、それが朴大統領の目にとまって、支援を受けられる様になりました」との字幕が入る。
画像 また、はやり70年代前半のセマウル運動以前(この当時、運動自体は既に始まっていたが...)の、昔ながらの韓国の田舎の姿が記録された映像としても貴重だろう。特に鉄道マニアにとっては、現役時代の植民地時代に作られた蒸気機関車の動く姿が、鮮明に記録されている点は注目に値する(どうもイ・ウォンセ監督は水仁線にこだわりがあったようだ。後述の『小さなボール』でもナローゲージ時代、ディーゼル化された水仁線が出てくる)。

 俳優は、父親役に最近TVドラマのバイプレーヤーとして広く活躍し、『公共の敵2』でも出ていたパク・グンヒョンなど。

 本作品を撮ったイ・ウォンセ監督はDVDのライナーノートによると、キム・スヨン監督の下で10年間助監督を経験した後、1972年『忘れ去られた季節』で長編デビュー。70年代前半は『特別捜査本部』シリーズなど反共映画の監督として知られ、本作品の成功で児童映画監督としても認められる様になったという。
 彼の代表作として日本では『小さなボール』(1981年、日本語字幕版フィルムは福岡市立総合図書館「シネラ」所蔵2))が知られているが、塩田が舞台になっていること、そして鉄道がアクセントになっていることなどかなり共通点が見られる。本作品の社会批判色を強めたものが『小さなボール』だとも言えるだろう。しかし『小さなボール』は当局の徹底的な検閲によりずたずたにされ本来の意図が分からない作品になってしまったという。
 さらに反米意識を明確にした1985年『女王蜂(国内ビデオ公開題:レイプされた姉妹/白昼の地獄罠 [1990年日本コロンビアリリース])』を撮ったことで当局の監視対象に置かれ、映画界から去らざるを得なくなったという。

 韓国版DVDに関して言えば、保存状態の悪いものが多い過去の韓国映画にあって、フィルムの傷、汚れは多少あるものの、色彩は極めて鮮明でテレシネの画質も比較的良く、かなり状態が良い。また続編を含む2枚組となっており、これは拾い物。韓国映画マニアの方には是非お勧めしたい。

1)シネマコリアのデータベースより http://cinemakorea.org/korean_movie/data/japan.htm
2)「シネラ」所蔵映画一覧 http://toshokan.city.fukuoka.lg.jp/docs/eizo/eizo.html

原題『엄마없는 하늘아래』 英題:『The World Without a Mother』 監督:이원세
1975年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
販売: Dream Mix 画面: NTSC/4:3(1:1.33) 音声: Dolby2 韓国語 本編: 120分(続編は100分)
リージョンALL 字幕: 韓/英 片面二層(2枚組) 2006年 9月発行 希望価格W33000

「イ・ウォンセ」  - KMDB (韓国語)
http://www.kmdb.or.kr/actor/mm_basic.asp?person_id=00005231

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
韓国版「にあんちゃん」と言うべきか 1975年作品『母さんのいない空の下』  yohnishi's blog (韓国語 映画他)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる