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zoom RSS 実はメッセージ性の強い韓国映画『スーパーマンだった男』

<<   作成日時 : 2009/02/03 01:03   >>

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画像 日本でもヒットした『マラソン』を撮ったチョン・ユンチョル監督による作品。この作品は自分をスーパーマンだと信じ様々な善行をして人助けをしようとする、気の触れた男とその男を自分のTV番組の企画対象として追う番組製作プロダクションのディレクターの女性との心のふれあいを描く。

 番組製作ディレクターのソン・スジョン(チョン・ジヒョン)は、月給も遅配、お涙頂戴満載のヒューマンドキュメンタリー製作の仕事に嫌気が差し、人間は飽き飽きだ、アフリカに動物でも撮りに行くと捨て台詞を残し、ビデオカメラ1台月給代わりに持ち出し会社を飛び出すが、新しいプロジェクトは頓挫。
 呆然として座っていた地下鉄の駅でビデオカメラを奪われm泥棒を追いかけ赤信号の交差点を渡ろうとしたところへトラックが突っ込んできて、あわや事故という矢先、ある男(ファン・ジョンミン)に助けられ、さらにその男は泥棒に奪われたビデオカメラも取り戻してくれる。さらに小学校の校門前に出てきた痴漢をその男がやっつける場面にも居合わせる。その男は自分はクリプトン星から来たスーパーマンだと主張するのだった。スーパーマンなら空を飛べ超能力も使えるはずと彼女が突っ込むと、ハゲの悪党に頭にクリプトナイトという石を仕込まれ超能力も空も飛べなくされたと言い、人助けを続ければいつかその石が取れて超能力が回復するのだという。
 スジョンは面白い取材対象が出来たとプロダクションに戻って彼の取材を開始する...

 この作品は、1990年代半ば当時パソコン通信で発表され、書籍の形で出版されたユ・イルハンのパソコン通信小説を原作としているが1)。DVDのメーキング映像の中で監督は、映画監督になる前からこの小説を映画化してみたいと思っていたと語っている。

 男がハゲの悪党によって頭の中に埋め込まれ、超能力を失わされたと主張するクリプトナイト、実は幼少時光州事件で撃ち込まれた弾丸がそのまま残ったものであることが明らかになる。ということはハゲの悪党とは全斗煥ならびに開発独裁のメタファーである....という風に考えていくとこの映画は極めて政治的メタファーに富んだ映画だと分かる。と来れば、さらにホワイトメンは表面的には精神病院職員だが、資本主義(白色)の手先という暗喩だろう。
 事実監督はメーキング映像の中で、本作品の映画化は観客にとって押しつけがましいのではと心配しながらも、この映画を作ることで、この映画に出てくるスーパーマンと同じように、少しでも世の中を変えられれば、という製作意図を語っている。やはりこの映画の本質は政治的メッセージ映画なのだ。

 映画の中でスーパーマンは、困っている人を前に傍観する群衆を尻目に人助けを行うと共に、しきりに地球温暖化を心配し、再開発事業を進める建設工事機械に向けて、怪物だと闘いを挑む。しかし、スーパーマンを心配したスジョンによって入院させられ、"治療完了"後、"正常化"した彼は他人に無関心になり、機械の様に生気のない日常を送る様に... つまり、"気が触れている"とされていた時の方が生き生きとしていたという矛盾。

 言うならば資本主義・開発独裁体制によって進められる産業主義的な価値観によって環境破壊が進む地球、再開発利権によって狂った様にスクラップ&ビルドされ昔ながらの市民生活が破壊されるソウル、そして競争至上主義的な価値観によって連帯を断ち切られ、他人に無関心となりばらばらになってしまった個人、そういうものに対してドンキホーテ的に闘いを挑む存在がスーパーマンなのだ。そして立ち向かっていく方法として「大きな」政治運動よりも、一見些細に見える人々の日常的な相互連帯と相互扶助、他者への思いやりというオルタナティヴが提示される。だが、そういうスーパーマンが"気が狂った"ように見え、"正常化"しようと圧力をかける"体制"こそ問われなければならない...

 そのようなこの映画の持つメッセージ性を読み取れるか読み取れないかでこの映画の評価は大きく変わってくると思う。またこの映画の持つメッセージは、不況下の中派遣切りが進む現代日本でも十分に有効性を持つものだと思われるが、『ケムル(グエムル - 漢江の怪物)』の持つ政治的メタファーが全く理解されなかった日本で、しかも「韓流」の枠の中でチョン・ジヒョンの出る単なるスター映画として見る多くの日本の観客の中で(二人の演技は確かに非常に良いのだが)、果たしてこのメッセージはどの程度読み取られうるだろうか?

 なお、韓国版DVDに含まれるメーキング映像が出色の出来。多くの韓国映画のメーキングは、単にスターを露出させるサービス映像として、だらだらと撮影現場の映像やインタビューを流しているケースが多いが、本作品のメーキング映像は伝えたいメッセージが明確で無駄がなく面白い。監督本人の指示で編集されたとすれば、チョン・ユンチョル監督の構成力の確かさを伝える好材料。日本版DVD発行の暁にはこのメーキング映像の収録も是非期待したい。

 なお、本作品はSPOが主催する韓流シネマフェスティバル2008の枠の中で『星から来た男』の邦題で劇場公開された。このフェスティバルは基本的にはSPOのDVD発行の際の箔付け(「劇場公開作品」という)企画と思われるので、本作品も国内盤DVDの発行が期待される。ただこの邦題には苦言を呈したい。原題の『슈퍼맨이었던 사나이』は過去完了であり、今はスーパーマンではない、という意味が伝わることが題名として非常に重要なのである。しかし『星から来た男』では過去完了的ニュアンスが全く伝わらず全くのナンセンス。おそらく「スーパーマン」という言葉が商標等に引っかかるのではと憂慮してこのような邦題にしたのであろうが...


1)NewsWire 2008.1.29 "スーパーマンだった男"原作小説再刊(韓国語)
http://www.newswire.co.kr/?job=news&no=314329
この記事によると、1999年にMBCでこの話は一度ドラマ化されたという(小説は1994年発表)。またチョン・ジヒョンが演じたディレクターは原作小説にはなく、今回映画のため付け加えられた役だという。

原題『슈퍼맨이었던 사나이』英題『A Man who was Superman』監督:정윤철
2008年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
販売: Bear Entertainment 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編: 110分(劇場公開時は102分)
リージョン3 字幕: 韓/英 片面二層 2008年10月発行 希望価格W25300

韓流シネフェス「星から来た男」
http://www.cinemart.co.jp/han-fes2008/au_movie/20080630000511.html

映画生活「星から来た男」
http://www.eigaseikatu.com/title/24517/

韓国映画雑記帳「スーパーマンだった男」
http://blogs.yahoo.co.jp/chuunenfan2/55721912.html

他の韓国映画に関する記事
http://yohnishi.at.webry.info/theme/fc194a0a1f.html


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2009-04-24

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