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zoom RSS 文化財返還を巡る韓仏間トラブルを描く映画『Coreen 2495』

<<   作成日時 : 2009/02/21 11:52   >>

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画像 文化財返還問題を扱った韓国のドキュメンタリー映画。
"Coréen 2495"とは朝鮮王朝の王族の葬儀儀式の手順を記録した書籍「徽慶園園所都監儀軌」上巻のフランス国立図書館(BNF)における登録番号(朝鮮語文書2495号の意味)。現在この書籍は韓国にあるが、それがフランスから韓国に渡った経緯を追いかけながら、文化財返還問題について問題提起する作品。

 もともとこれらの旧朝鮮王朝が所蔵しておりフランスに渡った書籍類は、1866年の江華島事件によってフランス軍に戦利品として奪われた物であった。ソウル(当時、漢陽)の王宮には奎章閣(キュジャンカク)という名の朝廷の文書庫があった。そして江華島には朝廷の文書を分散保管するため外奎章閣(ウェ-キュジャンカク)を設置した。しかしフランス人キリスト教宣教師9名が処刑されたことに対する報復としてフランス軍が江華島に侵攻したのが江華島事件。その際、フランス軍は外奎章閣に所蔵されていた6000余りの書籍のうち300余りを戦利品としてフランスに持ち帰り、残りの書籍は全て燃やしてしまった。画像
 朝鮮の朝廷は奎章閣、外奎章閣意外にも五台山他に文書庫を設置していたが、植民地化後、ソウルの奎章閣に保管されていた文書の内、一部は京城帝国大学に、そして多くの文書は東京に渡り、東京帝国大学図書館に収蔵された。また五台山等の文書庫に保管されていた文書は、やはり京城帝国大学に収蔵された。
 しかし東京に渡った文書の大半が1923年の関東大震災により焼失し、フランスに渡った文書の中に、世界中でそこにしかない文書が多数含まれることになった。なお、京城帝国大学→ソウル大学に残った文書は、幸いにも朝鮮戦争で戦災に遭うことなく今日まで伝えられている。
 フランスに渡った文書の行方は長い間確認されてこなかったが、パリ在住の古文書研究家(当時BNF職員であった)であるパク・ビョンソンによって大半がBNFに所蔵されていることが確認、整理され、その文書の存在も韓国に知られる様になった。とはいえ、パク・ビョンソンがこれらの文書を発見し、韓国大使館に連絡して返還を求めてはどうかと提案すると、大使館員は、古文書なんかよりも別にやることがある、余計な厄介事を持ってくるなと邪魔者扱いされ、BNF側からは韓国側を焚きつけているのではと疑いの目で見られ、フランスと韓国の双方から目の敵にされたそうだ。ちなみに彼女は1980年BNF退職後、フランスに保管されていた「直指」が世界最古の金属活字印刷物であることを確認するなどの活躍を行った。
画像 それらの文書が韓国側に戻りそうになったのが1993年。当時韓国の高速鉄道計画で、フランス、ドイツ、日本が受注競争を繰り広げている状態であり、計画の後押しもあって当時の仏大統領ミッテランが韓国を訪問することとなった。そこでミッテランは大統領は文書の返還を約束した。つまりTGVの韓国導入の見返りに返すという訳である。
 しかし1994年、フランスが高速鉄道契約を韓国政府と締結し終わると、BNFのキュレーターの反対で返還話は立ち消えになってしまった。そこで、2001年金大中大統領がこの問題解決のため、韓国側が相応の貴重資料をフランス側に提供する見返りに、BNFが保管する韓国の宮廷文書類を韓国側に恒久貸与するという内容の協定を結んだ。しかし、韓国側が見返りに提供する資料の価値が不十分だとの理由で(韓国側がフランス側に提供するのはオリジナルではなく複写だったため)、応じられないと態度を急変させた。
 この態度急変の契機の一つは、金泳三大統領がミッテラン訪韓の際、サンプルを持ってこいとフランス側に要求し、フランス側が持ってきた「徽慶園園所都監儀軌」の上下巻にあった。この文書をミッテランが持ってきたことにより、BNF側にフランス政府上部で韓国文書の返還の動きがあることが知られ、貴重な資料の国外流出はとんでもないとBNFのキュレーターが猛反対。結局、上下巻とも韓国に置いていく予定だったものが上巻のみ韓国に残し、下巻はパリに持って帰るという騒ぎになってしまった。そしてこの返還問題が騒ぎになった後BNFはこれら韓国文書の韓国人への閲覧をほとんど認めなくなってしまった...画像
 韓国側関係者は悔やむ。あのとき金泳三がサンプルを持ってこいと言わなければ粛々と返還も進んだのではないかと...大統領の政治的得点稼ぎのためにかえって実利を失ってしまった...
 また現存世界最古の金属活字印刷物である「直指」に至っては強奪されたのではなく合法的に購入され流出してしまったので、政府は返還要求すらしていない。

 撮影スタッフはBNFキュレーターで文書の韓国返還に反対の論陣を張ったコーエン氏にも取材を申し込んだが、夏のバカンス中と言うことで取材は叶わず、代わりに在韓フランス大使館の文化担当官に取材をしているが、美術品は全人類の宝であり、その国に留めなければいけないという理由はないとの答えだったが、韓国側関係者は、フランスはドイツにナチ強奪美術品の返還を求め、返還を受けている、当然そのロジックで行けば返還しても良いはずだ。それが返還に応じないのはフランス政府が韓国政府を二流国家だと馬鹿にしているからだ、と憤慨する。同様にギリシャ政府が大英博物館に対し、流出したギリシャの遺物の返還を求めているが、これも拒絶されている。これに対し大英博物館はギリシャに置くよりロンドンに置くことによりより多くの人が文化財に触れることが出来ると回答したと言うが、その考え方で行けば全ての文化財は北京に持って行けばいいという理屈になるではないか...

 文化財の返還は難しい問題である。今日文化財の国際移転については国際条約も出来ルールも確立しているが、1866年当時は帝国主義の時代であり、取った者勝ちの時代であった。とはいえ文化財はその価値が分かる者の元にあるべきであり、例え原産地であってもその価値を評価できなければ、現地に留めておくべきではない。日本の浮世絵などの美術品も多数海外に流出しているが、江戸末期〜明治頃、当時の日本人は浮世絵は二束三文の価値しか認めておらず、これらの浮世絵が海外に流出していなければ、それらが今日まで残っていたかどうかは疑問である。ただ外奎章閣文書については強奪されて流出したという点が、海外流出した日本の文化財、あるいは「直指」(これも朝鮮朝末期フランスへ流出)などの他の韓国の文化財と異なる点である。

 フランス側にしても朝鮮王朝文書は植民地時代に既に大量に日本に流出しており(そして関東大震災でその大半は失われた)、逆に略奪とはいえフランスに保管していたからこそ今日伝えられたのではないか、と主張する。それに対しソウル大図書館にある文書はちゃんと保管している、と韓国側は反論するが、朝鮮戦争当時これらの文書が焼失しなかったのはどう贔屓目に見ても単なる偶然であろう。組織的に守られていたとはとても思えない。パク・ビョンソン氏がこれらの文書の存在を知って在仏韓国大使館に何とかしなければと掛け合った時に、大使館側が、忙しい最中に余計なことを言い出す頭の痛いおばさんだ、程度の認識しかなかったという点も、韓国人の多くにこの文書の重要性が本当に理解されているとはとても思えない。まして最近韓国の国宝第1号が、個人の腹いせのために簡単に灰に帰したことを考えてみても、韓国における文化財の保管状況に疑問を持たれても致仕方ないだろう。おそらく、外奎章閣文書が韓国におけるイシューになったのはミッテランがTGV技術導入の取引の餌として、韓国政府の目の前にちらつかせてから、フランス政府が韓国政府を見下しているかどうかを計る試金石になったからこそではないだろうか。

画像 韓国政府のメンツの問題を別にすると、映画で指摘されなかった問題として、外奎章閣文書に対する韓仏の認識のギャップの問題が横たわっている様に思われる。フランス人にとって外奎章閣文書は歴史資料というよりは明らかに美術品なのだ。だからBNFでパク・ビョンソン氏が文書を整理するまでは、中国の資料だか韓国の資料だかも分からなかった。それにも拘わらず流出を頑なに拒むのはその美術的価値からに違いない。おそらく1866年当時焼かずに持ち出された文書は美術的価値を認められた物のみで、文字のみの文書は全て焼かれてしまったのだろう。しかし、韓国側にとっては美術品というよりも歴史資料としての価値が重要なのである。
 したがって、フランス側が同等の価値ある物との交換を条件に、外奎章閣文書の永久貸与(返還)を申し出てきた時に、韓国側が歴史資料の複写物を提供をすることで返還を受けようとしたのに対し、フランス側が同等の価値がないとして返還を拒絶したのは当然なのである。複写でもオリジナルでも歴史資料の情報価値としてはそう大きく変わる訳ではない。しかし、フランス側にとっては元々これらの文書の持つ情報価値は猫に小判なのである(フランス語による全訳でもついていれば別だが)。ただ彼らにとって意味があるのは美術品としての価値のみであったのだ。従ってフランスにすればモネのオリジナルの絵を、ルノワールの絵の複製と交換する馬鹿がいるか、と言う訳である。このあたりは映画制作者も含めて韓国側が決定的に理解していない点であろう。
 もちろん、映画にも紹介されているが、そもそも等価交換という協定を結ぶこと自体問題だという考え方もある。それは韓国政府が1866年の仏軍による略奪を正当なものと認めたことになるからだ。しかし、国家として一旦協定してしまったものは今更引っ込められない。
 フランス側が外奎章閣文書を美術品として大切に保管するのはともかく、それにより韓国側の歴史研究者がこれらの外奎章閣文書にアクセスできないということがともかく問題である。それに関しては外奎章閣文書の半分程度についてはモノクロのコピーが韓国側に提供され、研究者の閲覧に供されているという。とはいえ外奎章閣文書の特徴はカラーの手書きの図版が多く含まれていることであり(だから美術品としての価値をフランス側は認めているのだ)、モノクロでは情報量が大幅に欠けていることは間違いない。

 フランス側が韓国を見下している、見下していないという国のメンツの問題を別にすれば、次の様な妥協案もあるのではないか。フランス側が美術品としての価値を見いだし、韓国側が歴史資料としての価値を見いだしているのであれば、フランス側が外奎章閣全文書のカラーによる詳細なファクシミリ(コピー)を韓国側に提供するということでも良いのではないか。その費用は、BNFが全人類のために文化財を保管しているというならば、かつて文書を略奪していったことの補償も含め、フランス側の負担において。

 まあ、鼻先ににんじんをぶら下げられ、フランスの良いようにTGVを売りつけられ散々良いようにあしらわれた挙げ句、にんじんを引っ込められて、完全に韓国がフランスにコケにされたと憤懣やるかたない韓国人の心情には大いに同情するが...

 なお、DVDにはBNFへの抗議葉書10枚入り。果たして何人の韓国人がこのDVDを買って抗議葉書を出したのやら。韓国人みんなネットのタダ見で済ましちゃうからなぁ...

原題『Coréen 2495』監督:하준수
2005年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
販売: テウォンエンタテインメント 画面: NTSC/4:3(LB1:1.85) 音声: Dolby2 韓国語 本編: 115分
リージョン3L 字幕: 韓/英/仏 片面二層 2008年10月発行 希望価格W19800

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という、記事が3/8朝日新聞に出ている。 ...続きを見る
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2010/03/09 00:56

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