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zoom RSS 韓国のタルトンネを描く映画  『1番街の奇跡 』

<<   作成日時 : 2008/11/17 00:15   >>

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 『頭師父一体(ボス・マイ・ヒーロー)』、『色即是空(セックス・イズ・ゼロ)』の頭師父フィルムの作品。監督、主演とも『色即是空』のメンバーが再結集。『色即是空』はシモネタ全開コメディーであったが、本作品は意外にも社会派コメディとなっている。考えて見れば『頭師父一体』はヤクザが高校に再度入学するという、学歴社会とその裏返しのパラレルワールドであるヤクザ社会をぶつけてコメディを作るという点では、ユン・ジェギュン監督に社会批評的センスがやはりあると言うことか。

 この作品の舞台になっている場所は、ソウルのタルトンネ(月の街)と呼ばれる、貧民街。タルトンネとは元々屋根が破れて家の中から月が見えるという意味で付けられた名前。欧米のスラム街は都市の中心街周辺に発達するが、韓国、特にソウルの場合は大衆市場の後背地の丘陵地帯の傾斜地に発達する。ただ生活面では貧しくても文化的に荒廃している訳ではなく、犯罪も取り立てて多発する様な場所ではない。ムーダンの看板を掲げている家も多く、伝統的な精神生活も残っており、コミュニティのつながりも活発な地域のようだ。そう言う意味では、アノミーが進んでいる欧米のスラム街とはかなり趣を異にする地域だという1)。ソウルのタルトンネの多くは1973年に再開発地域に指定されたということである。これらの地域は最近地下鉄網の発達により利便性が増し、再開発のターゲットにされている。勿論再開発をしても従来の住民は経済的理由から再開発地域に住めるとは限らず、大きな社会問題となる。これがこの映画のバックグラウンドになっている。ただ、ソウルの今日の貧困層は再開発が進み整理が進むタルトンネよりも、高試院(コシウォン=本来は試験勉強のために借りる部屋)が生活基盤になっているケースが多いようで、これは日本でもネットカフェやサウナ等がロスジェネの生活拠点になっているのと軌を一にしている。そういう意味では貧困層の生活問題は近代化に伴い一層深刻化していると言えるだろう。その意味では、タルトンネを描いたことは、舞台設定は現代ながらも、韓国の人たちのノスタルジックな感覚に訴える映画なのだろう。
 但し、映画に描かれるタルトンネはソウルにしては随分緑が多い、と思ったら、ロケは釜山で行われている様だ。

 この映画ではタルトンネの住民の地上げのためにやってきたヤクザの地上げ屋と一所懸命日常生活を送る住民との交流が描かれる。当初地上げのためにやってきたヤクザは、地域を歩いているうちに地域住民に情が移り、地上げの仕事が滞る様になる。一方地域住民にすれば、役所から再開発地域だとして、社会的インフラサービスの提供を拒否されていたところを、ヤクザの一言で様々なサービスが提供される様になって、彼をスーパーマン扱いするようになる。しかしそんな蜜月は当然長く続かない。結局住民生活は経済論理の波に飲まれ、住民に情を掛けた地上げ屋は裏切り者となり追い出される。
 そう言う意味では決してハッピーエンドではないのだが、全てを失った街の人々は韓国人らしい楽天的な考え方で再出発に取り組んでいく。ああ、韓国の人たちはこうやって苦境をしのいできたんだなぁ...という感覚が実感できると共に、社会的矛盾にも気付かせてくれる、そんな映画に仕上がっている。

 映画のストーリーとしては、若干整理が不十分で余計な部分や迂回している部分もある様に感じるが、何よりも韓国人らしい人情が良く描けているという点が本作品の最大の魅力であろう。

1)ハウジング・スタディ・グループ(1990)『韓国現代住居学』建築知識 参照。

原題: 『1번가의 기적』 監督:윤제균
2007年 韓国映画

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1番街の奇蹟
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2008-11-07

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